10月26日に文科省が公表した2016年度の「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」を受け、新聞各紙にはそんな衝撃的な見出しが躍った。
同調査によると、全国の小中高校などにおける「いじめ認知件数」は前年度から約10万件増え、32万3808件で過去最高を更新した。加えて、児童生徒によるいじめを原因とする自殺は中学生8人、高校生2人の計10人で、前年度から1人増加した。
いじめが一向に減らない現実を前にして、どのように子供を守るべきなのだろうか。教育研究家の石川幸夫さんが解説する。
「子供は小さなけんかや諍い(いさかい)から、まずは自分の痛みを知り、痛みに対処する方法を学び、次に相手への痛みをおもんぱかる感覚を学びます。ですが、今は少子化や核家族化の影響で、子供を守ろうとする親の意識が強すぎ、小さなけんかや諍いさえ排除されてしまいます。その経験不足から、子供たちが打たれ弱くなり、危機に陥った際の対処法がわからず、短絡的に自殺という最終手段に出てしまうんです。子供が危機に直面している時やけんかしている時には、よっぽどの場合を除いて、親が介入することを我慢することも必要です」
近年は子供たちの自主性に重きを置いた「叱らない子育て」を賛美する向きもある。しかし、学校における集団生活は時に人間関係のトラブルを孕み、社会は往々にして厳しいものだ。そこに至るまでの間に、自殺を選択肢から外す「打たれ強さ」を授けてもらえない子供たちは、いじめとはまた別の“被害者”なのではないだろうか。
だからこそ、現代では子供を「死なせない叱り方」が求められている。幼児教育研究家の平川裕貴さんが続ける。
「頭ごなしにガミガミ叱ることは、最近は悪だとされる傾向があります。ですが、時には感情をあらわにして叱ることがあってもいいと思います。それは“自分を庇護してくれる親でさえ、感情を持った人間なんだ”ということを教えることになります。“人は感情的になることがある”ということを経験則で知っていれば、池田中のような行きすぎた感情的な指導に遭遇したときにも、状況をある程度客観的かつ冷静に受け止めることができるかもしれません」
いじめや指導死は悪である。だが、そういったものを世の中から駆逐することが現実的ではない今、必要なのは「生かすために叱る」ことなのかもしれない。
※女性セブン2017年11月16日号