財務省は総選挙投開票翌日の政府税調の総会に、満を持して所得税改革の説明資料を提出した。そこには、サラリーマン、年金生活者など低所得の非課税世帯まで国民に広く網をかける所得税の増税メニューがズラリ並んでいる。本来選挙の公約は消費税率10%への引き上げだったのだが、いつの間にか所得税の見直しが検討事項にされていたのだ。「選挙に勝ったんだから消費増税に限らず、あらゆる増税路線が信任を得た」とでも政府は考えているのだろうか。
財務省が年末の税制改正に向けて増税攻勢をかけてきたのは、2018年は“増税にうってつけの年”とみているからだ。第2次安倍政権で自民党と公明党が政権に復帰した2012年以来、これまでは毎年、衆院選、参院選、統一地方選挙のどれかが行なわれた。
「自民党政権は選挙の前に国民の恨みを買う大増税を絶対にやらない。過去2回の消費税率引き上げ決定も、自民党は社会党の村山(富市)首相、民主党の野田(佳彦)首相をそそのかして法案を成立させた。自民党ではない首相に“火中の栗”を拾わせ、選挙大敗のリスクも押し付けるうまいやり方だ」(財務省OB)
もちろん、その根回しをしたのは財務省だ。10月の総選挙で安倍政権は大勝利し、次の大型選挙は2019年春の統一地方選と同年夏の参院の改選までない。2018年は大型選挙がない「空白の年」となる。来年は自民党にとっても選挙に影響なく増税ができるチャンスだ。
「財務省と与党の税調幹部とは昨年から所得税の控除を抜本的に見直すことで一致している。問題はタイミングだったが、解散総選挙で好機が来た。衆院議員は2021年まで4年間の任期を得たから“来年なら次の総選挙までに国民は増税の痛みを忘れてしまう”と与党内を説得しやすいし、参院議員には“せっかく次の参院選は消費税引き上げ実施の前に行なわれるのに、所得税見直しを来年12月の税制改正に先送りすると参院選とまともにぶつかってしまいます”と財務省が説得工作を始めている」(同前)