昨今、不祥事にあえぐ企業は多い。日産自動車やスバルでは、完成した車を資格のない検査員が検査し、市場に出荷する『無資格検査』の実態が明らかになった。神戸製鋼でもアルミ・銅・鉄粉製品などの品質データを改ざんしていたことが判明しており、日本工業規格に満たない製品を出荷していた疑いも指摘されている。
日本の“ものづくり”を牽引してきた超名門企業が、なぜいま相次いで崩壊しているのか。法政大学現代福祉学部教授で社会活動家の湯浅誠さんが解説する。
「原因は、バブルが弾けた1990年代前半までさかのぼります。当時、世界的に経済競争が激化するなか、日本も『良いものを作ったから売れる』という時代ではなくなりました。そこで、海外との経済競争に負けないよう、グローバル化と人件費削減を推し進めたのです。
製品を海外でも販売し、同時に安く生産するため、拠点を海外に移す。販売、生産両面のグローバル化に、日本企業はこぞって取り組みました。中国など人件費が安い国で製品を生産し、簡単に首を切れる非正規雇用の人材を大量に採用したわけです。
そうして雇用を切り刻んだ結果、生命線でもある技術力が海外に流出し、国内企業は空洞化して、かえってグローバル競争に勝てなくなった」
かつて家電といえば「メイドインジャパン」の独壇場だったが、いまや韓国のサムスンやLG、中国のハイアール、美的集団などが台頭し、日本メーカーは凋落の一途を辿っている。昨年8月、経営不振のシャープが台湾企業の鴻海精密工業に買収されたことも記憶に新しい。
「しかも海外メーカーは、日本製品より値段が安い。技術力が変わらないのなら、安い方が売れるのは当たり前です。とりわけ欧米市場において、日本製品は“駆逐”される勢いでシェアを失っています」(湯浅さん)
事実、アメリカの大手家電店では、最も目立つ場所にサムスンとLGの製品が並び、ソニーやパナソニック、東芝の製品は片隅に追いやられている。
「世界で勝てない」という焦りが、目先の利益を求める姿勢に繋がり、ひいては“偽装”を生むという悪循環。
「結果、日本のものづくりへの信頼が、世界から急速に失われている。これは、決して東芝だけの問題ではないのです」(湯浅さん)
慶應義塾大学総合政策学部教授(歴史社会学)小熊英二さんは、「時代の変化への適応」がキーワードだと指摘する。
「高度成長期の日本では大量生産、大量消費で家電が飛ぶように売れましたが、しだいに国内生産と国内販売が減少した。国際市場ではアジアの海外製品に価格面などで勝てず、2000年代半ばから原発を頼りにするようになったが、これは東日本大震災で機能しなくなってしまった。
高度成長期の成功モデルにしがみつき、時代の変化に適応できなかった東芝は八方塞がりになったのです。これは、多くの日本企業に共通する問題です」
※女性セブン2017年11月16日号