臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になった著名人をピックアップ。記者会見などでの表情や仕草から、その人物の深層心理を推察する「今週の顔」。今回は、各国首脳との握手シーンからトランプ大統領のご機嫌具合を読み解く。
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米国のトランプ大統領がアジアを歴訪している。米国との関係を強化し、外交基盤を築こうとする各国だが、日本では「国賓並み」の厚遇でおもてなし。それに対して韓国の文在寅大統領は「国賓」待遇で迎え、中国習近平国家主席はその上をいく「国賓以上」の待遇で歓迎した。はたして各国の思惑通りに事は進んだのか。各国でのトランプ大統領の仕草から見てみよう。
まずは日本。予定のゴルフ場へ到着したトランプ大統領は、待っていた安倍首相の元へ右手を差し出しながら歩み寄った。安倍首相はその場で手を差し出して握手すると、大統領が首相の二の腕を軽く叩いた。握手しながら相手の二の腕を軽く叩いたり触ったりするのは、トランプ大統領によく見られる親近感を示す仕草だ。
就任した頃と比べると大統領の握手は、だいぶ大人しくなっている。自分の立場や権力をこれ見よがしに握手で誇示しなくても、よくなったということだろうか。
迎賓館での歓迎式典では、レッドカーペットの上を並んで歩く安倍首相と歩調がシンクロすることが多々あった。意識せずとも歩幅や歩くペースが同調する“ミラーリング”が見られたのだ。ミラーリングとは仕草や表情などが相手と同調することをいう。互いの存在を受け入れ、相手に対して好意をもっているということだ。北朝鮮問題では見解を一致させた日米2人の首脳の関係は良好なのだろう。
だが韓国では、日本と違う顔を見せた。大統領府での歓迎式典では、文大統領が車を降りたトランプ大統領に右手を差し出して近づいた。だが、トランプ氏は車のドアの横に立ち、メラニア夫人が反対側から降りてくるのを待ったまま。自分から手を差し出して、積極的に文大統領に歩み寄ろうとする気配が見られない。握手をした時には、トランプ大統領の左手が文大統領の肩甲骨辺りに置かれ、さらにその手が文大統領の右肩を抑えたのだ。
実は、これと同じことが今年の2月にあった。カナダのトルドー首相をホワイトハウスで出迎えた時だ。トルドー首相は難民受け入れに対して、トランプ大統領とは反対の意を唱えた人物。トルドー首相に良い感情をもっていなかっただろうトランプ大統領は、力比べのような握手とともに彼の肩をがっちりと押さえ込んだのだ。
北朝鮮への対応では足並みが揃わない米国と韓国。文政権の融和的路線や、中国との関係改善のために米軍の高高度防衛ミサイルTHAADの追加配備をやめるという発表など、トランプ大統領にとっておもしろいはずがない。力ずくででも言うことを聞かせる…、文大統領の肩を押さえたのは、そんな意思が透けて見えるような仕草だ。