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性犯罪被害者の苦悩、警察による捜査で心と体の傷に塩

警察の捜査でも精神的に追い詰められたと語る詩織さん

「私は相手の男性を告発したいのではありません。性犯罪の被害者が泣き寝入りせざるを得ない日本の司法システムや捜査方法、そして被害者に対して不寛容な社会のあり方を少しでも改善したくて、声を上げたのです」

 力を込めて語るのは、ジャーナリストの伊藤詩織さん(28才)。詩織さんは2015年4月3日、レイプ被害を受けたという。国際的なジャーナリストを目指し、希望に満ちていた彼女の人生は、この晩の出来事で一変してしまった。

 10月18日に著書『Black Box』(文藝春秋)を上梓した彼女は、そこで初めてフルネームを明らかにした。

 ニューヨークの大学でジャーナリズムと写真を専攻していた詩織さんは2013年秋頃、仕事で同地を訪れた元TBSテレビ報道局ワシントン支局長の山口敬之氏(51才)と知り合った。山口氏から仕事の話をするという理由で2人で会った後に、レイプ被害に遭ったという。

 詩織さんは警察に被害届を提出。山口氏を準強姦容疑で告発し、裁判所から逮捕状も出た。だが、逮捕当日になり、刑事部長の判断で突然執行が中止に。結果、2016年7月に「嫌疑不十分」として不起訴になった。

 2015年に日本で発生した強姦事件の件数は1167件。これは世界的に見てもかなり少ない。実際、国連薬物犯罪事務所のデータ(2013年)によると、人口10万人あたりの各国のレイプ事件の件数は、日本は1.1件で世界87位。1位のスウェーデン(58.5件)のおよそ60分の1だ。だが、この数字は、実態をありのまま反映したものではない。

「スウェーデンでは性的暴行は起こった回数分カウントします。例えば、数年にわたって毎日のように同じ人から被害を受けていたら何百回、というように。また、被害に遭ったらすぐに治療・検査が受けられる24時間365日体制のレイプ緊急センターがあり、女性警察官の割合も日本と比べ高く、性犯罪の捜査に取り組む環境が整っていて被害届を出しやすい面もある。逆に日本は、性被害を受けても警察に届けにくい環境なので、泣き寝入りが増え、結果的に発生件数が少なくなります」(詩織さん)

 内閣府の調査(2014年)によると、異性から無理やり性交させられた経験のある女性のうち、警察に相談した人は4.3%にとどまる。一方、どこにも相談しなかった人は67.5%に達する。

 なぜ、日本では性被害者が声を上げにくいのか。詩織さんが身をもって体験したのは「警察のサポート体制の希薄さ」だ。詩織さんは押し寄せる恐怖と痛みに苦しんだ末、事件から5日後に警察を訪れた。

「受付で『女性の警官をお願いします』と言っても話が通じない。他の待合者がいるなかで『強姦の被害に遭いました』と伝えました」(詩織さん)

 その後ようやく現れた女性警官にもう一度、事件の詳細を伝えた。

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