症状や不調の原因が病気の場合は、専門医でしっかり治療することが必要。高齢になれば誰でも心身の機能が低下し、ストレスに対する抵抗力が弱まります。この状態をフレイルという。
このフレイル対策として大切なのは、運動と栄養だという。世田谷区で認知症などの老年病治療、在宅医療にも尽力している、医療法人社団創福会ふくろうクリニック等々力院長の山口潔さんはこう語る。
「重要視すべきはやはり筋肉。転倒、骨折など要介護状態に直結するからです。筋肉を減らさないようにするためには、栄養と運動の両方が必要です。運動は、筋肉を増強するようなトレーニングもありますが、運動になじみのない高齢者なら日常での転倒や骨折防止を目標に、基本的なバランスと筋力を維持する『片脚立ち』『スクワット』などをきちんとこなすほうが効果的です。
栄養は毎日3食をしっかり食べて必要なエネルギーをキープ。特に骨や筋肉のもとになるたんぱく質とカルシウム、骨の健康を維持するビタミンDなどは積極的に摂りましょう。また筋肉を効率よく増やすといわれるロイシンの栄養補助食品もおすすめです」
「加齢のせいだからしかたない」と思いがちだが、超高齢社会の今、フレイル対策をすることで少しでも長く元気に自立生活が送れるなら、遠からず高齢者になる私たち世代も今から始めたいところだ。しかし山口さんはこうも語る。
「フレイル研究は明るい可能性を見出し、私も高齢者の豊かな人生の一助になればと取り組んでいますが、まだ治療効果や回復の可能性が確定しているわけではありません。
したがってフレイル対策をしないと要介護になるという考えは間違い。忘れていけないのは、みんな必ず年を取り、介護が必要になるのも当たり前だということです。高齢の親御さんに付き添われて来る子世代の人たちは、若い頃の親御さんを知っているだけに、“あの頃”に戻したいという思いがどこかにあるように感じます。でもそれは無理なこと。
フレイル対策も、“元気でいるためにやりなさい”と周りが言うのでは意味がない。ご本人がやることに価値を感じ、そのために自分の人生に価値を感じ、“もっと楽しく長生きしたい”と思うことが大切です。ご本人がそんな気持ちで取り組めるよう、親子がともに無理をせず、支え合えられればよいですね」
※女性セブン2017年11月23日号