「トランプ訪問」は中国にとっても大きなイベントだった。現地の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏がレポートする。
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中国のメディアでとみに目立って増えているのが「自己肯定」的な記事だ。なかでも、「外国がこんなに中国が褒めている」という類である。
見ていてちょっと気恥ずかしくなるが、この点では日本も決して負けてはいないので、残念である。東シナ海を挟んで「中国はこんなにすごい」、「日本のすごさに外国人が驚愕した」とやっているのだからみっともない。しかも、どちらも欧米人に褒められることが大好きという点も共通している。
そんななか中国人の自尊心をくすぐる記事が出て、『人民日報』が嬉々として伝えている。それが11月13日付の米『TIME』マガジンである。中国人の心をくすぐったそのタイトルは〈China Won〉である。要するに中国の科学技術の一部がアメリカを上回ったという内容だ。
これを報じた『人民日報』のタイトルは、〈あなたが見慣れた中国のブラックテクノロジーは外国に比べて少なくとも10年は先を走っている〉だった。ブラックテクノロジーとは、未成熟でも可能性を秘めた未来のテクノロジーを指す。
記事中では無人の輸送EV車やドローン、高速の仕分けロボットや顔認証、高速鉄道などといったお馴染みの技術がいくつも紹介されている。
いずれも「Won」というには少し早いような気もするが、それでもアヘン戦争以来引きずってきたコンプレックスを払拭できるかもしれないという高揚感は理解できなくもない。
だが、これが政治的な色を帯びるとやはり敬遠したくなる。つまり中華民族の優位性をことさら強調する民族主義や国粋主義的な動きだ。そして驚いたのがトランプ大統領の訪中を受けた『人民日報』の記事(11月10日付)だ。この記事の中で習近平国家主席がトランプ大統領に語ったとされる言葉がこう紹介されている。
「(習近平は中国の悠久の歴史のなかでの文化伝承に触れ)文化は流れが寸断されることなく伝承され続けてきた国は、中国だけである。われわれはまた黒髪で黄色い肌も受け継いできた。われわれは自らを『龍の子孫』と呼んでいる」
この言葉を通訳がどう訳し、トランプ大統領がどんな顔で聞いたのかにも興味をそそられるが、いずれにせよネット上では“いいね!”が吹き荒れたという。