「あなたのドラえもんをつくってください」とのメッセージを受け取った28組のアーティストによる新作を集めた「THE ドラえもん展 TOKYO 2017」。画家の近藤智美さんによる『ときどきりくつにあわないことするのが人間なのよ』は、鏡面世界と夢を描いたものだ。近藤さんが同作品について語る。
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地球を狙うロボット軍との決戦を描く『のび太と鉄人兵団』から着想を得た作品です。原作では鏡面世界で物語が展開していて、私自身が見た鏡面世界の夢とリンクさせました。変形した上下のパネルは夢の記憶を再現。技術が進歩し過ぎて破滅を迎えた2045年から、原作と私が生まれた1985年をドラえもんが笑顔で覗いています。
過去と未来を並行して描いているので、見比べてみると失われたものや壊れたもの、時の流れで姿を変えたもの、残された負の遺産などが様々に発見できると思います。私は10代でマンバ(ヤマンバギャルの第2世代)を体験していてブームの熱狂から終焉、残酷な青春の幕切れを身をもって実感しました。その時代を経て絵の道へ進んだ今がある。そんな喪失経験や少女期の甘酸っぱいノスタルジーも作品へ詰め込んでいます。
藤子・F・不二雄先生への敬意を込めて、希望の裏にある絶望からも目を背けずお見せしたい。作品では破壊された未来の世界にも温かな救いの光を忍ばせています。よりよい明日のために今を頑張るという自戒です。
●こんどう・さとみ/1985年、広島県生まれ。画家。渋谷でのマンバ経験を「表現行為に近かった」と語り、独学で絵を描き始める。代表作に『巨匠をよろこばす 股を冷やす』(2015年)。個展やグループ展ほか、幅広く活躍。
◆「THE ドラえもん展 TOKYO 2017」は2018年1月8日まで、森アーツセンターギャラリーで開催(東京・六本木ヒルズ)。【開館時間】10~20時(火曜は17時まで)【休館】会期中無休。
※週刊ポスト2017年11月24日号