生徒にとって、けがや病気以外でも癒しとも言うべき存在が「保健室の先生」だ。学園ドラマでもさまざまな女優が演じてきたが、今、井川遙、壇蜜が演じる 新しいタイプの「保健室の先生」に注目が集まっている。コラムニストのペリー荻野さんが、この2人が演じる「保健室の先生」について解説する。
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今、ふたりの「保健室の先生」が気になる。ひとりは櫻井翔主演のドラマ『先に生まれただけの僕』の舞台、私立啓明高校保健養護教諭の綾野沙織先生(井川遥)。もうひとりは、『秋田県立いぶり学校中等部』の壇蜜先生である。こんな先生がいる保健室なら、今すぐ駆け込みたい!という方も多いと思う。ナイスなキャスティングである。
沙織先生は、校長として学校の立て直しに奮闘するものの、改革意識のない先生と対立したり、生徒に反発されてへとへとの涼介(櫻井)に「薬は出せません」と言いつつ、胃腸の調子を整えるハーブティーを出してくれる。「我慢は禁物ですよ」「応援しています」なんてことも言ってくれる。「ここ落ち着く」と、思わずここに通っていいかと聞く涼介には、「ダメです」ときっぱり。仕事には厳しいのである。
これまでドラマの「保健室の先生」といえば、タフな仕事ぶりから“アマゾネス”とあだ名がついた『金八先生』シリーズの天路先生(倍賞美津子)、借金苦から特殊能力を持つ生徒に事件を解決させて警察からの謝金を狙うという『左目探偵EYE』の困った狭山先生(石原さとみ)などがいたが、井川遥は、生徒も先生もほっとさせてくれる、今までいそうでいなかったタイプの「保健室の先生」といえる。ドラマでは、そんな沙織に涼介を嫌うギラギラ専務(高嶋政伸)が接触。このあたりも気になるところだ。
一方、壇蜜先生は、故郷秋田の人気ミニアニメで保健室の先生に。この番組は、秋田県立いぶり学校中等部」2年生コンビ、顔はイケメンだが、頭に角が生えていたり学生服の肩に蓑を羽織っていたりとどこか“なまはげ”っぽい生萩さとしと、ジャージーを着た犬顔の犬塚はち郎が、秋田県民のあるあるを全編地元方言で語るゆるーいアニメだ。
第1話「(秋田県民は)なんたらときでも、きりたんぽ食べてるって」思われたり、「今日はサラダ寒天でねえの?」と親戚に言われたりするというトークを展開してスタートした番組は、第16話「初恋は保健室の先生ってあるある?」の回でついに保健室に壇蜜先生が赴任! アニメなのに壇蜜先生は、グラビアのごとくリアルなお顔。白いシャツに短めのスカートで腰かけて保健室でにこにこしている。もちろん、声は本人である。
「壇蜜じゃねーか!」当然のごとく大興奮したふたりは、保健室に突進する。はち郎に至っては、わざと同級生に殴ってもらってケガをして、壇蜜先生に「あら、大変」と助けてもらうのである。あるある…じゃなくて、こらこら。
第17話では、壇蜜先生が足を組み替えるたびにドキドキする二人。タイトルが「嗚呼、魅惑の三角地帯」って。も一度、こらこら。
壇蜜が幅広い層から注目され、多彩な場で活躍できる理由は、こうした「こらこら」な場でも、自分がどう振る舞うべきか、期待に100%応える賢さだと改めて思う。そして伝わる郷土愛。正直、地元でないとわからないこともあるが、壇蜜先生の保健室を実現させたことだけでも、このアニメはすごい。一見の価値あります。