ぜんそくは気管支に慢性的な炎症が起こり、気道が狭くなる病気で、発作が起きると激しくせき込み、呼吸困難に陥る。国内で約120万人の患者がいると推計され、近年は中高年になってから発症する成人ぜんそくが増えている。年々減少はしているものの、年間約1500人が死亡し、とりわけ65歳以上の高齢者の割合が高い。
治療はステロイドと気管支拡張剤(β刺激薬)の吸入が主に行なわれ、約9割で症状のコントロールが可能だ。2剤の吸入で効果が得られない患者に対しては、別の種類の気管支拡張剤を加えたり、ゾレアやヌーカラなどの抗体製薬を投与して治療する。それでも発作を繰り返す難治性ぜんそく患者が4~5%存在するので、これら難治性に対する新しい治療法として導入されたのが、気管支サーモプラスティだ。
聖マリアンナ医科大学病院呼吸器内科の峯下昌道教授に話を聞いた。
「気管支表面のアレルギーなどによる炎症の刺激で、気管支の壁にある平滑筋(へいかつきん)が収縮し、気管支が狭くなって、ぜんそく発作が起きます。ぜんそく患者の気管支平滑筋は肥厚しており、これを熱で消失させることで狭くなった気道を広げる研究が行なわれてきました。結果、55℃から65℃で平滑筋がダメージを受けることがわかり、開発されたのが気管支サーモプラスティです」
治療は局所麻酔か、全身麻酔で行なう。のどから気管支鏡を挿入し、先端が4つに分かれた、電極の付いたプローブを気管支の内側にあて、高周波電流を流し、65℃で10秒間温める。1か所が終了すると気管支鏡を5ミリメートル手前に動かして再び加熱する。治療に際しては気管支鏡を操作する医師、プローブを4か所にあてて通電する医師、どこを治療したかを記録する医師の3人でチームを組んで行なう。
気管支は左右の肺に広範囲に枝分かれしているため、治療は右下と左下、両側の上部と3回に分けて実施する。右下と左下は約50か所に、両側の上部は約70か所に熱をかける。右下の治療が終わると約3週間の間をおいて左下を、さらに3週間かけて左右の上部を治療する。