「あなたはどこで、どんなふうに死にたいですか?」そう問われたら、すぐに答えられますか。現在、生き方、死に方を綴って、ともにベストセラーとなっている著者2人が初顔合わせ。『安楽死で死なせて下さい』著者で熱海在住の脚本家・橋田壽賀子さん(92才)と『なんとめでたいご臨終』の著者で、「看取り」を多数行ってきた医師・小笠原文雄さん(69才)だ。それぞれの主張の相違点と共通点からは、私たちにこの先どんなことが待ち受けているのか、どんな心持ちで生きていけばいいのか、たくさんのヒントがあった。
小笠原:今日は『おしん』の橋田さんにお目にかかれて光栄です。
橋田:ありがとうございます。小笠原先生は日本在宅ホスピス協会の会長をしてらっしゃるんですよね。熱海にいい在宅医療の先生はいらっしゃいませんか。なんて、いきなり、うかがいますが(笑い)。
小笠原:具体的には存じ上げませんが、あの辺りは在宅医療のドクターが増えてきていると思います。
橋田:年寄りが多いですからね。小笠原先生の『なんとめでたいご臨終』(小学館)はいろんなケースが出てくるのでとても興味深く、あっという間に読んでしまいました。90才を過ぎた私も、先生の本に出てくるような最期が迎えられたらいいなあと思って、いいホームドクターを探してるところなんです。
小笠原:橋田さんは先日の『渡る世間は鬼ばかり』(TBS系、9月18日放送の3時間スペシャル)で、ホームドクターこと訪問診療医を出していらっしゃいましたね。
橋田:ええ。というのも、私は月に1度大学病院に通って血液検査をし、十何種類ものお薬を処方されてるんですが、そのとき触診というものがない。パソコン上の数字だけで、いいとか悪いとか言われます。それって変じゃないですか?
小笠原:病院には、そういうところが多少あるかもしれないですね。
◆体を触り、心の状態を診る病院の医師はいない?
橋田:体に触り、心の状態も診て、こういう生活環境で、こういう心理状態だから、こういう病気になっていると、そこまで診てくださるホームドクターでないと、安心して看取ってもらえないですよ。だから私の理想のドクター像を『渡鬼』の英作に託したところがあります。
〈本間英作(植草克秀)は岡倉家の五女・長子(藤田朋子)の夫。前述の3時間スペシャルでは、脳外科から訪問診療医に転身し、自分で往診専門の診療所を開設した。それは、母の常子(京唄子)を充分介護できなかった後悔があったからだが、寝食を忘れて患者のために緊急往診にも応じる英作に対し、長子は置き去りにされたように感じて実家に戻ってしまうシーンも描かれた〉
小笠原:英作さんは緊急往診に誠実に対応するあまり、身体どころか、家庭まで壊しそうでしたね。
橋田:往診専門でやっていると、あんなふうになるんじゃないですか?
小笠原:在宅医療をしているぼくから言うと、在宅医療の経験の浅いドクターが、ああなるんです(笑い)。
橋田:えっ、そうなんですか?