「オレオレ詐欺」がこれほど注意喚起されるようになった今も、詐欺の手口はどんどん進化し、なくなる気配がない。だが、高齢者側も“騙されるかもしれない”という不安に脅えるばかりではなかった。自ら詐欺師を“とっちめる”人々がいた──。
「ユウヤだけども」
東京に住む孫の名前を名乗る電話で、携帯電話の番号を変えたという話だった。福島県郡山市在住の無職・遠藤清さん(77)は、孫の本名を名乗ってきたことから、完全に信用した。
「明日10時にそっちに行くから」というので待っていたが、何時になっても来ない。心配になった遠藤さんが電話すると、ユウヤはこう言う。
「実は儲け話に乗って郡山の銀行から1000万円を借りて渡したんだけど、詐欺師だと気づいた。警察に逮捕してもらって600万円は戻った。けれどあと400万円を都合しないと俺が刑務所に入れられる。200万円が都合できたから、残り200万円を何とかしてもらえないか」
隠居の身である遠藤さんだが、方々手を尽くして100万円ほどは工面した。ユウヤに連絡すると、「それを持って東京に来てくれ。4時までに払わないと」と焦った声で急かす。急いで新幹線で東京駅に向かうと、「自動車が混んでいて東京駅まで行けない。京葉線に乗って越中島という駅まで来てほしい」と言う。越中島に着くと、今度は「駅から少し離れた駐車場に行って、弁護士が来るのを待ってほしい。お金はその弁護士に渡して」と指示された。背広を着て現われた「弁護士のタナカ」を名乗る男に、遠藤さんは現金100万円を渡した。