2025年に700万人を突破すると予測される認知症のうち、45歳未満に発症する若年性アルツハイマー病は遺伝の影響が強いことが以前からわかっていたが、それ以外のアルツハイマー型認知症は環境的要因が大きいとされていた。
だが最近は、そこに遺伝的要因が関わっていることが解明されつつある。2017年4月、約2000人を対象にしたオランダの研究では、親が80歳未満で認知症と診断された場合、子供が認知症を発症するリスクが2.58倍になったと発表された。
原因となる遺伝子が特定されていることも認知症の特徴だ。
「すでに認知症を誘発する遺伝子が100~200個近く見つかっています。なかでも『APOE4遺伝子』を持っている人は、60代や70代といった早い段階で認知症になりやすい。ただし、この遺伝子を持っていると必ず認知症を発生するわけではなく、加齢や生活習慣などの環境的要因も大きく関与します」(同志社大学生命医科学部特別客員教授の石浦章一氏)
日本で代表的な疫学研究を行なっているとして有名な(福岡県の)久山町研究では、「APOE4遺伝子」を「持たない集団」の認知症発症率が10.2%だったのに対し、「持つ集団」は28.8%となり、3倍近い差があった。
2013年に米国人医師のデイビッド・B・エイガス氏が双子研究などを用いて、26の病気の発症に遺伝的要因と環境的要因の影響が何割ほど認められるかを調査したが、その調査でもアルツハイマー病に占める遺伝的要素は62%に達した。超高齢化を迎える日本にとって認知症への対応は大きな課題であり、さらなる解明が待たれる。
別掲した図は、これまで触れたもの以外で生活と密着している病気の発症リスクをまとめたものだ。合わせて知ることでさらに対策の幅は広がるだろう。
※週刊ポスト2017年12月1日号