トランプ米大統領が11月20日、北朝鮮を「テロ支援国家」に再指定すると発表した。2008年に指定解除して以来9年ぶりのことだ。トランプ政権は北朝鮮に「最大限の圧力」をかける戦略で、今回の再指定もその一環のようだ。もし、金正恩氏がアメリカの圧力に耐えかねて政権が崩壊するようなことがあれば、その後の朝鮮半島情勢はどうなるのか。元航空自衛官でジャーナリストの宮田敦司氏が大胆に予測する。
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「テロ支援国家」の再指定は、使い古された手法を復活させるしかないトランプ政権の窮状を物語っているといえる。もし、「テロ支援国家」に指定することで、米国の思い通りに北朝鮮に白旗をあげさせることができるのなら、オバマ政権の「戦略的忍耐」は必要なかった。
そもそも、最初に「テロ支援国家」に指定したのが1988年(大韓航空機爆破事件を受けて指定)なので、これにともなう経済制裁に効果が出ていたのなら、金正日政権で北朝鮮の独裁体制は終わっていただろう。
最近のトランプ大統領の発言をみていると、北朝鮮に対する武力行使というオプションを封じ込めたようにみえる。大統領選挙期間中から過去の政権の対北朝鮮政策を批判しておきながら、トランプ大統領ができたことは「口撃」の応酬だけだった。
今春の「戦略的忍耐の政策は終わった」という発言は何だったのだろうか。今回の「最大の圧力」という経済制裁の効果が出るまで、事実上、「戦略的忍耐」を続けることになるだろう。しかし、これは北朝鮮が最終的に降参するということが前提となる。
軍事力による「牽制」は、11月になって空母3隻の日本海への派遣でピークを迎えた感がある。相変わらずB-1BやB-52戦略爆撃機を韓国周辺へ飛行させているが、もうこれ以上、打つ手はないだろう。
◆「賭け」に出られないトランプ大統領
米紙「ワシントン・ポスト」は11月5日、トランプ大統領の支持率が、就任から同時期の過去約70年の歴代大統領で最低の37%で、不支持率が59%だとする世論調査結果を発表した。
就任した年だというのに、任期終了間近に起きるレームダック化の様相を呈しているトランプ大統領は、もはや対北朝鮮政策だけでなく、国内政策を含む、あらゆる政策で「賭け」に出ることができなくなった。
北朝鮮への武力行使を考える前に、終わりが見えない中東での戦闘を終結させるほうが先だろう。今年4月6日のシリアのシャイーラート航空基地に対する59発のトマホークによる攻撃は何だったのだろうか?
米軍の核戦略や作戦を立案する戦略軍のジョン・ハイテン司令官が11月18日、トランプ大統領から核攻撃の命令を受けた場合、それが「違法」な命令であれば従わずに反論すると明言した(出所/「CNN.co.jp」2017年11月19日)。
ハイテン司令官の発言は、見方によっては大統領を狂人扱いしているかのような内容だが、トランプ大統領が軍首脳からの信頼を失っていることは確かだろう。ハイテン司令官はトランプ大統領が「一発逆転」を狙うことを恐れているのかもしれない。