国内

危険ドラッグ業者 仮想通貨の普及で再び暗躍の兆し

仮想通貨は便利だが…

 関東信越厚生局麻薬取締部が公開した、川崎市での危険ドラッグ密造・密売グループ摘発の映像では、どこにでもある木造二階建て住宅に、大量の危険ドラッグの原料、遠心分離機や大型攪拌機、油圧式プレス機、大型扇風機が置かれていた。この事件では、その規模の大きさと、取引に仮想通貨が使用されていたことが、クローズアップされている。今回の事件から垣間見える、再び蔓延しようとしている危険ドラッグの罠について、ライターの森鷹久氏が迫った。

* * *
「ついに」なのか「やっと」というべきなのか……。

 関東信越厚生局麻薬取締部が、所持や販売が禁止されている薬物を製造・販売したとして、23歳から76歳までの男女8人を今年9月に逮捕したことがわかった。3年かけて摘発した密造・密売アジトの様子が11月に公開されたが、その規模の大きさには捜査員も驚いたという。リーダー格の男性によれば、2013年ごろから危険ドラッグの販売を始め、月に三千万円程度の売り上げがあった。

 容疑者らが製造拠点にしていたのは、神奈川県川崎市内の住宅街にある一軒家。ここから、危険ドラッグの元となる化学薬品約180キロ、同じく原料となるハーブ(草片)約1.6トンが押収された。これらは末端価格にして30億円以上になり、違法薬物の押収量としては「国内最大規模」(捜査関係者)なのだという。

 また、筆者の調べによれば、ネット上に現存する「危険ドラッグ販売サイト」大手のうちの一つが、容疑者らによって運営されていた。大手サイトは捜査員や当局の目につきやすく愛好者らのコミュニティでは以前から「危ないのでは」と噂されていたため、今回の大規模摘発も大きな話題になっており「ついに逮捕されたか」などの声が上がっている。

 拙著『脱法ドラッグの罠』(イーストプレス、2014)でも詳報したが、当時から、危険ドラッグの製造はいかにも人工物をつくりそうな工場よりも、住宅街の一軒家や郊外の倉庫など、非常に身近なところで製造されていた。

 1990年代半ばから日本でも販売されていた危険ドラッグだが、2014年6月、危険ドラッグを吸引したドライバーによる暴走事故が池袋で発生し7人が死傷し社会問題に発展した。以後、危険ドラッグ使用者による凄惨な事件・事故が頻発し、当局による厳しい規制の結果、販売店舗はほぼ壊滅。主に中国などから持ち込まれていた危険ドラッグの原料も、水際作戦によりほぼ流通がストップし、薬物ユーザーらの「大麻回帰」も問題視されるほどだった。ところが最近、再び危険ドラッグが世に蔓延しようとしている。

「危険ドラッグは再び”合法ハーブ”として、ネット上で頻繁に取引されています。もはや当局の規制などお構いなし。所有や販売が禁止されている”指定薬物”入りのハーブもガンガン売ってる。作る側、売る側が開き直ったようにも見えますね」

 こう話すのは、以前筆者が取材した元「危険ドラッグ販売店」関係者の男性だ。男性は2012年頃まで、都内で複数の危険ドラッグ販売店を経営していたが、取締りや摘発の圧力を感じ、すべての店を畳んだ。以来、ドラッグ絡みの商売は一切やっていないというのだが、かつて取引をしていた危険ドラッグ製造工場関係者から最近「またハーブを扱ってみないか?」と打ち明けられたというのだ。

「以前は危険ドラッグの販売は店舗がほとんどでした。規制後はネット販売も行われてきたけど、全部潰された。でも今は、ネットで販売しても”足がつかない”方法があると言われました。海外のサーバーや匿名化技術を使ったり、Bitcoin(ビットコイン)などの仮想通貨を決済手段にすれば、ほぼほぼ身バレの心配はない、と」

 今回、川崎市で摘発された過去最大規模の危険ドラッグ密造・密売グループによる販売サイトも、ビットコインでの取引が可能なものだった。

 海外には、捜査当局から「発信者開示請求」などの要請があっても完全に無視を決め込んでしまう、遵法意識の低いサーバー運営会社が存在する。例えば、わが国と国交のない南アフリカの小国にあるサーバー上にホームページを開設すれば、日本当局が業者に接触したところで、先方が捜査協力してくれることはまずない。

 また「Tor(トーア)」と呼ばれる通信システムを使えば接続経路を匿名化できるので、情報の発信元を辿ることが事実上不可能になる。同じように、匿名で決済が可能なビットコインなどの仮想通貨を使えば、ドラッグをはじめとした違法物のやり取りだけでなく、ブラックマネーの資金洗浄ですら、今すぐ、簡単に行うことができてしまう。海外の仮想通貨取引所には、身分証の提示を求めずに口座を開設させている業者もあるからだ。

 この「ほとんど身バレの心配がない」技術が使えるようになったために、またもや堂々と、ネット上で危険ドラッグ販売を行う連中が出てきたというのだが、では今回逮捕された業者は、なぜ身バレしてしまったのか。事情通が明かす。

「今回逮捕された業者は、大手販売サイト”X”の運営者です。ホームページを海外のサーバーに置くなどして、表向きは運営がどこの誰か、全く見えなかったが、購入した人物がパクられ、支払い履歴などから身バレに至った。取引すべてが仮想通貨になっているわけではないですからね。今はまだ、銀行振込や代引きなど、足がつく方法で販売しているサイトもありますが、いずれすべての決済は”仮想通貨のみ”になるはずです。そうなれば、リスクは送付手段だけ、という事になります」

関連キーワード

関連記事

トピックス

「複数の刺し傷があった」被害者の手柄さんの中学時代の卒業アルバムと、手柄さんが見つかった自宅マンション
「ダンスをやっていて活発な人気者」「男の子にも好かれていたんじゃないかな」手柄玲奈さん(15)刺殺で同級生が涙の証言【さいたま市・女子高生刺殺】
NEWSポストセブン
大阪・関西万博が開幕し、来場者でにぎわう会場(時事通信フォト)
「日本人は並ぶことに生きがいを感じている…」大阪・関西万博が開幕するも米国の掲示板サイトで辛辣コメント…訪日観光客に聞いた“万博に行かない理由”
NEWSポストセブン
ファンから心配の声が相次ぐジャスティン・ビーバー(dpa/時事通信フォト)
《ハイ状態では…?》ジャスティン・ビーバー(31)が投稿した家を燃やすアニメ動画で騒然、激変ビジュアルや相次ぐ“奇行”に心配する声続出
NEWSポストセブン
NHK朝の連続テレビ小説「あんぱん」で初の朝ドラ出演を果たしたソニン(時事通信フォト)
《朝ドラ初出演のソニン(42)》「毎日涙と鼻血が…」裸エプロンCDジャケットと陵辱される女子高生役を経て再ブレイクを果たした“並々ならぬプロ意識”と“ハチキン根性”
NEWSポストセブン
4月14日夜、さいたま市桜区のマンションで女子高校生の手柄玲奈さん(15)が刺殺された
「血だらけで逃げようとしたのか…」手柄玲奈さん(15)刺殺現場に残っていた“1キロ以上続く血痕”と住民が聞いた「この辺りで聞いたことのない声」【さいたま市・女子高生刺殺】
NEWSポストセブン
山口組も大谷のプレーに関心を寄せているようだ(司組長の写真は時事通信)
〈山口組が大谷翔平を「日本人の誇り」と称賛〉機関紙で見せた司忍組長の「銀色着物姿」 83歳のお祝いに届いた大量の胡蝶蘭
NEWSポストセブン
20年ぶりの万博で”桜”のリンクコーデを披露された天皇皇后両陛下(2025年4月、大阪府・大阪市。撮影/JMPA) 
皇后雅子さまが大阪・関西万博の開幕日にご登場 20年ぶりの万博で見せられた晴れやかな笑顔と”桜”のリンクコーデ
NEWSポストセブン
朝ドラ『あんぱん』に出演中の竹野内豊
【朝ドラ『あんぱん』でも好演】時代に合わせてアップデートする竹野内豊、癒しと信頼を感じさせ、好感度も信頼度もバツグン
女性セブン
中居正広氏の兄が複雑な胸の内を明かした
《実兄が夜空の下で独白》騒動後に中居正広氏が送った“2言だけのメール文面”と、性暴力が認定された弟への“揺るぎない信頼”「趣味が合うんだよね、ヤンキーに憧れた世代だから」
NEWSポストセブン
高校時代の広末涼子。歌手デビューした年に紅白出場(1997年撮影)
《事故直前にヒロスエでーす》広末涼子さんに見られた“奇行”にフィフィが感じる「当時の“芸能界”という異常な環境」「世間から要請されたプレッシャー」
NEWSポストセブン
天皇皇后両陛下は秋篠宮ご夫妻とともに会場内を視察された(2025年4月、大阪府・大阪市。撮影/JMPA) 
《藤原紀香が出迎え》皇后雅子さま、大阪・関西万博をご視察 “アクティブ”イメージのブルーグレーのパンツススーツ姿 
NEWSポストセブン
2024年末に第一子妊娠を発表した真美子さんと大谷
《大谷翔平の遠征中に…》目撃された真美子さん「ゆったり服」「愛犬とポルシェでお出かけ」近況 有力視される産院の「超豪華サービス」
NEWSポストセブン