映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづった週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』。今回は、新曲『煙が目にしみる』が発売中の役者兼歌手、中条きよしが『必殺』シリーズに三味線屋勇次としてレギュラー出演、スタッフとともにキャラクターを掴み変化させていったことについて話した言葉を紹介する。
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中条きよしは1981年スタートのテレビ時代劇『新必殺仕事人』(テレビ朝日)に「三味線屋勇次」役でレギュラー出演、大ブームを巻き起こした。
「『必殺』では、工藤栄一監督のスペシャル『仕事人大集合』でフランキー堺さんに吊るされて殺される役が二度目の出演でした。その時、カメラの石原興、照明の中島利男というスタッフと気が合いましてね。撮影の合間に喋っていたら、彼らが『俺らも推すから、レギュラーでおいでよ』って言うんです。
その後、新地のクラブでショーをしていたらフランキー堺さんとABCの山内久司プロデューサーがいらして、山内さんが『フランキーさんが凄く推してるからレギュラーで出てほしい』と。こちらからお願いしようと思っていた話なので、もちろん『ぜひ』と返答しましたよ。
そのことを石原と中島に伝えたら、彼らも事情を知っていたんでしょうね。『きよしさん、五本出るうちに自分でキャラクターを掴んで決めないと人気は出ませんよ』と言ってきまして。それで僕の知らないうちにみんながいろいろと考えてくれて、殺しの道具には三味線の糸を使うことになったんです。
糸は三種類用意してあって、その中で一番細い糸を使うことにしました。細い糸の方が殺される側からすると怖いだろうから、ということで。
初回の放送が始まったら、翌日に『きよしさん、視聴率34パーセントです!』って。驚きましたね。運が良かったんだと思っています」
勇次の母親役を演じたのは、山田五十鈴だった。