たばこの葉を直接燃やさずに吸えるため煙やニオイが少なく、喫煙時に発生する有害性物質のおよそ90%削減が謳われていることからも一気に普及が進む「加熱式たばこ」。だが、従来からある紙巻きたばことの“違い”が鮮明になるにつれ、喫煙環境をめぐる戸惑いやマナーに対する疑問も広がっている。
10月下旬、とあるイタリア料理店の店主が投稿したツイートが大きな反響を呼んだ。
〈灰皿くださいとも言わないでアイコス吸ってるからどうするのかと思ったらこうなってました。当店、明日から完全禁煙とさせていただきます〉
このつぶやきとともにアップされた画像には、濡れおしぼりのビニール袋の上に、加熱式たばこ「アイコス(米フィリップ・モリス・インターナショナル)」の吸い殻が2本、剥き出しの状態で置かれていた。来店した客がそのまま帰っていったという。
同ツイートに寄せられた多くのコメントは、「いくら何でも非常識」「マナー違反」といった声で溢れたが、中には「火を使ってないんだから別にいいじゃん」、「おしぼりのビニールの中にゴミとして入れていくのであれば、ギリギリオッケーの気もする」という意見もあった。
当の来店客の真意は分からないが、仮に紙巻きたばことは違う加熱式たばこの構造ゆえ、吸い殻を灰皿に捨てず、紙ナプキンなどと同じ“普通ゴミ”の感覚で捉えていたのだとしたら、店側もゴミ箱に捨てるよう促すなど違った対応があったのかもしれない。
では、加熱式たばこの吸い殻はどこにどうやって捨てるのが正しいのか──。アイコスはもちろん、国内で加熱式たばこを販売するメーカー3社に聞いてみた。
アイコス製品を扱うフィリップモリスジャパン合同会社では、今回のツイッターの投稿を受けて社内でも意見交換が行われたという。
「確かにわれわれも、アイコスの使用中は灰も落ちないために灰皿は要りませんというコミュニケーションをしている部分があったので反省材料ではありますが、灰皿が要らないからといって、吸い終わったスティックをどこに捨ててもいいというわけではありません。
火も使わないため最終的には可燃ゴミ。ゴミ箱があればそこに捨てていただいても構いませんが、加熱式とはいえ“たばこ製品”ですので、基本的には灰皿に捨てていただくのが良かったのかなと思います。
今回のケースは店内でガムを噛んでそのままティッシュの上に置いて帰るのと同じこと。マナーという意味では、周囲の方への気遣いなど、お客さん自身の配慮が欠けていたのでは? という声が社内から出ました」(同社コーポレートアフェアーズ コミュニケーションズ&コントリビューションズマネジャーの小池蘭氏)
現在、同社ではポイ捨て防止など適切な処分を促すマナー啓発強化を実施中だ。アイコスキットを購入した人には、紙でできた簡易の「使用済みたばこスティック入れ」を配布。また、アイコスが吸える飲食店やホテルなどには、加熱式たばこ専用の回収ボックスを配っているという。