現在、日本人の実に2人に1人ががんになり、3人に1人ががんで亡くなっている。もしも大切な家族ががんになったら、あなたががんになったとしたら、その時、どうしますか?著書『なんとめでたいご臨終』が発売5か月で7刷のベストセラーとなっている小笠原文雄さんと、『安楽死で死なせて下さい』を著した脚本家・橋田壽賀子さんが、病名や余命の告知の是非について話し合った。
小笠原:ぼくは病院勤務時代の苦い経験をもとに、告知はすることにしています。よほどの場合を除いて。
橋田:よほどとは?
小笠原:1割くらい告知を希望されない患者さんもいますから。
橋田:こちらが聞きたくないと言えば、告知を断ってもいいんですね。
小笠原:もちろんです。その代わり、必要なときは、心が通ってから、目を見て、手を握り、気を感じながら「あなたはがんなんですよ」と言います。患者さんはいったん落ち込みますが、告知後は必ず患者さんの心のケアもするので、1時間か2時間ぐらいでウソみたいに表情が変化する。落ち込んでいたのが、満面の笑みに変わるんです。生かされているいのちに気づかれるんですね。
本当にその劇的な変化には驚かされます。そしてその気づきには、延命効果まであるんですよ。だからぼくは、今は告知を全然恐れていません。告知後のフォローが重要であることは言うまでもないですが。
橋田:余命何か月とか何日とか、具体的におっしゃるんですか。
小笠原:聞かれたら言います。
橋田:治療すれば治りますとか、そういうウソはつかない?
小笠原:患者さんにとって抗がん剤が有害だと判断した場合は「治療したら早く死にます」と言います。治らないがんの場合でも、緩和ケアをすると延命効果が期待できるけど、治療したら逆効果になることも多いんですよ。
橋田:なるほどね。
小笠原:もちろん、治るがんもありますよ。例えば慢性骨髄性白血病は、お金はかかりますけど97%治ります。抗がん剤で「治るがん」もあれば「早く死ぬがん」もあって、早く死ぬがんの場合は残念ですが、使えば使うだけ死期が早まります。それを正しく伝える必要があります。
※女性セブン2017年11月30日・12月7日号