中国は一人っ子政策を段階的に廃止してきている。その一方で離婚も増えているという。現地の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏が解説する。
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まるでパスポートのように大きく「中華人民共和国」の文字が印刷された朱い冊子。下には政府のマークも刻まれているのだが、その下にある文字は、なんと「離婚証」とある。そんな離婚証なるものが発行されて、ときには提示を求められるとは知らなかったが、その写真を大写しで掲載したのが、『東方ネット』(10月16日)である。
見出しにあるのは、〈我が国の離婚者数 昨年だけで830万人を突破 離婚の原因の47%がなんと嫁姑トラブル〉である。つまり相性を含めた夫婦の問題ではなく、それ以外の問題がおよそ半分の動機を占めているということだ。
この数字の背景として気になるのが、中国では相変わらず結婚後も夫の両親の家に転がり込むなど二世帯同居が普通に行われているということだ。どうしてそんなことになるのかといえば、当然のこと不動産価格の問題がある。
現在、中国の不動産は北京や上海、深圳といった大都会はもちろんのこと、各省の省都ほか、二番目から三番目くらいの都市くらいまでは、不動産価格が上がり過ぎていて、とても若者に手が出る水準ではなくなっているのだ。かねてから指摘されてきたことだが、若い夫婦が二人の時間を持つためにその両親である老人が長い時間を公園などで時間を過ごしてきた。中国の住宅事情の「あるある」だが、これでは互いにストレスがたまる。
日本同様、いまや少子高齢化は中国でも大きな悩みで、有名だった「一人っ子政策」も段階的に廃止してきた。だが、中国の若者はいま、「笛吹けど踊らず」で政策を緩和してもその効果が現れないことが政府の悩みになっている。
中国政府はやはり子供を産めと言う前に、住宅事情を改善して離婚を食い止めなければならないのだろう。