三菱自動車のコンパクトSUV(スポーツ多目的車)「RVR」が今年10月に改良された。三菱自といえば「パジェロ」や「デリカ」に代表されるオフロードでも力強く走る名車を数多く生み出してきたが、近年は燃費不正問題もあり、スリーダイヤのブランド自体が低迷していた。
だが、ここにきて日産自動車・仏ルノー連合の傘下入りや、SUVブームも追い風となり、三菱車が勢いを取り戻しつつある。改良したRVRに試乗したという自動車ジャーナリストの井元康一郎氏がレポートする。
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三菱自動車の改良版RVRを600kmあまり走らせる機会があったのだが、いかにも三菱というべきテイストを持ち合わせていたことに驚きを覚えた。
エクステリアのデザインは昨今流行しているクロスオーバーSUVのようにしか見えない。が、実際に走らせてみると、ファッション性重視のモデルとはまったく異なる、れっきとしたSUVだった。
試乗ルートは東京都内の市街地走行、および北茨城方面へのロングドライブで合計666km。北茨城では樹木伐採のための機材のキャタピラーで掘り起こされ、きついアンジュレーション(路面のうねり)が連続する未舗装の林道や砂地も走った。
RVRは市街路、高速道路、未舗装路と、どのシーンにおいてもSUVらしいゆったりとした動きを示した。とくに速度の上がる高速道路や郊外路での当たりの柔らかい乗り心地や安定性は、大型SUVと同じとまではいかないが、共通する味を感じさせるものだった。
SUVらしさが最大限に発揮されたのは、未舗装の林道走行だった。最低地上高が195mmと、一般の乗用車より5~6cm高められているのに加え、バンパーの先端下部も少々の上下動で擦ったりしないよう高さが確保されているため、凹凸の大きな路面でもクルマを傷めずに走ることができた。
RVRの4WDシステムは「パジェロ」のような本格的なものではなく、前輪を主体にしながら後輪にも2割ほど駆動力を伝えるという簡易型である。
にもかかわらず、後輪の片方が浮くほどに荒れた箇所でも残りの車輪に駆動力が的確に配分され、コントロールは至ってやりやすかった。SUVを荒地でスムーズに走らせるためにはどうすればいいかということを熟知したセッティングである。