かつてコンビニエンスストアの雑誌コーナーといえば、発売日に書店よりも早い時間に入手できる、立ち読みする人がいることで防犯の役目も果たすなど店舗にとっての役割が小さくなかった。ところが、最近では成人向け雑誌の存在を筆頭に、何かと風当たりが強い。イオングループのミニストップが販売停止を発表した成人向け雑誌を今、購入している人たちは今後、どこで入手すればよいのか。このジャンルが生き残る道はあるのはか。ライターの森鷹久氏が苦しい業界の内幕を探った。
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大手コンビニ「ミニストップ」が、12月から千葉市内の店舗で成人向け雑誌の取り扱いをやめると発表した。さらに来年1月からは全国のミニストップ店舗でも販売を停止する。
同社によれば、コンビニを訪れる女性客、子連れ客からの要望を受け、今年5月ごろから取り扱い中止の検討をしていた。さらに、ミニストップを含めた総合スーパーやドラッグストアなどを傘下におさめるイオングループ全店舗でも、来年1月より成人向け雑誌の取り扱いを中止する方針が明らかになった。
成人向け雑誌は「有害図書」と受け取られているため、この取り組みに対する世論の反応は「概ね良い」(経済誌記者)というが、表現規制に反対するグループなどからは「行き過ぎだ」との声も上がっている。では、当の成人向け雑誌の制作サイドはどうだろうか。旧知の現役編集者に話を聞いたところ、意外にも落ち込んではいない反面「見せしめにされた」との憤りを隠さない。
「エロ本(成人向け雑誌)をコンビニで買う、という習慣はすでに消滅し、コンビニ側がエロ本の売り上げに期待しているなんてこともない。雑誌取次店などとの関係から、やむを得ず陳列していたという状況だった今回の決定は、商業的には“すでになくてもよい存在”になっていた、エロ本、そして我々を“悪”にして、企業イメージのアップを図ったのではとすら感じる」(現役の成人向け雑誌編集者)
そもそも今回の取り組みは、イオンと、同社が本社を置く千葉市側との調整を経て決定したものだ。販売店側が扱い拒否を一方的に決めてしまっては雑誌取次業者、流通業者との間に要らぬ軋轢を産んでしまう。また、行政だけが進んで“表現規制”をしようものなら、反発する声も余計に大きくなる。そこで、小売業者と行政側とがタッグを組み、また東京オリンピックなどを控えた昨今の“時代の要請”や、女性や子供たちに優しい環境作りをする、といった面をアピールすることで、企業イメージと自治体イメージの向上を狙ったのでは、と成人向け雑誌業界は見ている。
成人向け雑誌に限らず、大手コンビニの全店舗で、雑誌コーナーは縮小され続けている。かつては主力商品のひとつで、成人向け雑誌も有力商品に数えられていたため、棚も用意され仕入れルートも確立している商品だ。
ところが最近、たとえば大手コンビニのセブンイレブンでは、旧店舗のリニューアルを進めているが、新店舗での雑誌コーナーは旧店舗の半分以下という場所も多く、成人向け雑誌に至っては、ギャンブル本などに紛れて、わずか数冊が平積みにされているほど。「成人向け雑誌など、二日に一冊も売れません」と語るのは、千葉県内にあるミニストップの店長。
「年配のトラックドライバーなど、熟女モノや漫画モノを熱心に買い続けてくれる人たちもいます。彼らはネットに疎い人が多く、コンビニで買えなくなれば、もう手段はないでしょうね。書店でも成人向け雑誌の扱いは減っていると聞いていますから……」(ミニストップ店長)
彼らの多くは長距離の荷受け時間帯である深夜や早朝など、他の買い物客が少ない時間に買ってゆくという。出先で楽しむためにだけ購入するので、自宅に持ち帰らずに済む気兼ねのなさも、購入意欲を刺激しているのではないか。出張での利用者が多いビジネスホテルの近くにあるコンビニでは、成人向け雑誌コーナーが根強く残っているのもそんな事情だろう。