暗記重視の歴史教育を見直すため、教科書の収録用語を現在の半分程度に減らすよう「高大連携歴史教育研究会」(会長=油井大三郎・東大名誉教授)が発表した歴史用語の「精選案」が波紋を広げている。坂本龍馬や吉田松陰、上杉謙信などが削除対象となっているからだ。実はこれまでも、歴史教科書の“人選”は、一般的な知名度と必ずしも一致していたわけではない。たとえば昨年のNHK大河ドラマ『真田丸』の主人公・真田信繁(幸村)は教科書には登場しない。
幸村の末裔、仙台真田家13代当主・真田徹氏が語る。
「高校の履修時間内にすべてを教えられない、というのは先生方の言い訳に聞こえます。中途半端に世界史の知識を入れるぐらいなら、まずは日本の歴史をちゃんと教えてほしい。『真田三代』や『真田十勇士』は、講談や物語ですが、それを楽しむには武田信玄と上杉謙信の拮抗した関係やその後の関ヶ原の合戦など、時代背景を知っている必要がありますから」
“教科書から消される”ことに憤る末裔もいれば、“教科書に載せてほしい”と願う末裔もいる。問題はなかなか複雑だ。
関ヶ原で西軍から寝返った戦国武将・小早川秀秋の末裔、小早川隆治氏は“ご先祖は教科書に載らないままでいい”という立場だ。
「子孫の私だって小早川秀秋についてそこまで詳しくはありません。教科書や授業での暗記項目が多すぎると、“歴史の流れを理解する”という大事な部分が抜け落ちてしまいますから」
その小早川秀秋の離反によって命を落とした武将・大谷吉継の末裔・大谷裕通氏も「好きな人は自分で勉強してもらえればいいと思っています」と同意見だ。