女性セブンの名物記者“オバ記者”こと野原広子が、アラカンの現実を気の向くままに告白する。今回のテーマは「60才を過ぎてからの就職活動」についてだ。
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ちょっとそこまで散歩に出るにしても、お財布の中にいくらかのお金はいる。そのお金を生み出す仕事が、60才前後で大きな曲がり角に突き当たるという現実。
すでに通過した人は、「何を今さら」だけど、定年退職して新たな職探しをしている同世代の友達から、「行き止まり」だの「袋小路」だのという声がしきりに聞こえてくる。今回は“再就職”の迷路に入り込んで、そこから抜け出した人を訪ね、話を聞いてきた。
今年の春、大手不動産会社を定年退職したM子の話。彼女は私と同じ年の60才で、支社長賞を何度も取った凄腕の営業ウーマン。英語も上手で、しかも美人。その彼女が退職してすぐ、知り合いのブティックに勤めた。だけど、大会社しか知らないМ子は初っ端から、「雇用契約書はないんですか? 有給は?」と聞いたりして、80過ぎた女性オーナーの機嫌を損ねてしまう。
「そうしたら、時給1200円の約束が、『こんな役立たずとは思わなかった』と1000円に減らされ、出勤したら、『あら、今日は来なくてもよかったのに』と帰されたり」
グチが止まらないM子に、翌週に会ったらさらに目つきが鋭くなっていて、「仕事帰り、駅のホームに立っていると、電車に飛び込みたくなるのよ」とまで言うの。
幸い、その2か月後にブティックは店仕舞いしてM子は失業したけど、あのままいたらどうなっていたか。
「よく考えず、知り合いの会社だから悪いようにしないだろう、とイージーに仕事を選んだのがよくなかったのよね」
こうしてM子は本格的にハローワークで仕事を探す決心をする。
◆あるけどない、ハローワーク60才以上の採用枠
「ハローワークで最初にいいなと思ったのは、高級マンションのコンシェルジュ。マンションの売買をしていた前職を生かせるし、スカーフなんか巻いて受付に座っていたりしたらいいじゃない? だけど、応募しようと電話をしたら、『60才のかたはちょっと』って、履歴書すら受け取ってもらえないの」
おかしなことに、募集用紙を見ると、年齢制限のない仕事は山ほどある。だけど、いざ就活をすると話は別。60才過ぎたら限定された仕事しかない、とわかるまで、“再就職、初心者”のM子は、ハローワークという公的機関で当たっては砕けていた。
「たとえば、デパートの試食販売とか、保育補助とか。幼児向け英会話教室の講師もやれるもんならしたかったけど全戦全敗。履歴書を送っても返事がなかったり、ひどいところは、『〇日までに連絡します』と言うから期待して待っていると音沙汰なし。それで連絡すると、『ああ、別の人に決まりました』ってシレッと。人をバカにするのもいい加減にしろ。最初から採用する気がないなら、そう言えって、何度もキレそうになったわよ」