便秘の治療は、基本的には生活習慣の改善や便秘薬の服用などを組み合わせることで症状が改善する。ただ、中にはこうした治療では効果が得られない便秘もある。その一つが、直腸や肛門の機能の障害による便秘だ。便秘薬を服用して1時間近くトイレで頑張っても、水のような便が少ししか出ない。こうした“直腸肛門機能障害”が原因の便秘には、特別な治療が必要となる。横浜市立大学医学部肝胆膵消化器病学教室の中島淳主任教授に聞いた。
「普通なら便意を感じてトイレに行くと肛門が緩み排便できます。ところが、直腸肛門機能障害は便意があっても排便時に肛門が緩まず、便を出すことができません。大腸がんを疑い、内視鏡検査をしても、がんは見つからずに便秘薬でも排便できず、患者さんは大変苦しい思いをします。そこで肛門を緩めることができないために起こる便秘の治療に対し、欧米ではバイオフィードバック療法が標準的に行なわれ、保険適用されている国もあります」
バイオフィードバック療法とは、肛門が緩む感覚を取り戻すことを目的とした治療だ。
まず直腸に風船を入れて膨らませ、疑似便がある状態を作る。風船にはセンサーが付いており、肛門の筋肉の緊張状態がモニター画面に波形で現われる。トレーナーから肛門を緩めるようにいわれたとき、どれだけ肛門が緩んだかがモニターに波形として表示される。肛門を緩める訓練を目で確認しながらすることで、次第に排便時に肛門を緩めることができるようになる。日本では一部専門施設で自費での受診が可能だ。
難治性の慢性便秘症に対しては、逆行性洗腸法や摘便などで対応するが、それでも排便できないこともある。原因の一つが刺激性・依存性の高い便秘薬を長期間服用していることで、腸がまったく動かなくなっているせいだ。脳から排便の指令が届いても、薬がないと腸が動かないため排便できない。さらに大腸に便が詰まり、糞便性イレウス(腸閉塞)や大腸穿孔などを起こすこともある。