音楽誌『BURRN!』編集長の広瀬和生氏は、1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接している。広瀬氏の連載「落語の目利き」より、破天荒な新作落語で稀代のストーリーテラーぶりを発揮する三遊亭白鳥の幅広い芸についてお届けする。
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破天荒な新作落語で人気の三遊亭白鳥。渡世ブタ「流れの豚次」が男を磨く全10話の長編『流れの豚次伝』に続き、今年は女性落語家が主役の『落語の仮面』シリーズ(美内すずえの漫画『ガラスの仮面』のパロディ)も10話まで完成させるなど、その「稀代のストーリーテラー」ぶりはとどまるところを知らない。
そんな白鳥が10月9日、「創作落語30周年記念リロード」と称して、678席もある日本橋三井ホールで独演会を行なった。題して「白鳥ジャパン雪月花」。こんなに大きな会場でやること自体凄いが、宣伝チラシの裏面にはこの30年で彼が生み出した大量の新作落語のタイトルがズラリと並び、「何かが起こる」と期待させた。
そして実際、期待どおり。滅多に聴けないレアな演目3席が聴けた。
1席目は「月」にちなんで『真夜中の襲名』。パンダウサギのピョン吉が上野動物園の大名跡「カンカン」を襲名しようとする噺で、落語界の大名跡襲名をパロディ化した作品。もともと林家こぶ平の正蔵襲名の時期に林家彦いちが作り、白鳥が受け継いだもので、林家いっ平の三平襲名のタイミングで当時の話題を取り入れて大幅に作り替え、白鳥ならではの危ない爆笑作品に仕立てていた。近年まったくやっていなかったこの噺を時代に合わせてリニューアル、今回久々の披露となった。