国内

戦前に向く自民党の憲法24条改正案「女性は家の中で…」

憲法草案のメンバーメンバーだったベアテ・シロタ・ゴードンさん(左)

 9条ばかりが注目されている安倍政権の憲法改正案だが、彼らの狙いはそれだけではない。希薄な家族関係、晩婚化、少子化…その全ての鍵を握る「女性の生き方」を、国家主導で戦前回帰させようとしているのだ。

 71年前、日本国憲法の草案に「男女平等」を初めて書いた1人の女性がいた。ベアテ・シロタ・ゴードンさん(享年89)というアメリカ人女性だった。彼女の父親は有名ピアニストのレオ・シロタ。1928年に家族で来日し、5才から15才まで日本で暮らしたベアテさんは、日本文化に精通していた。アメリカに帰国後、大学で日本語のほかスペイン語、フランス語など6か国語を学び、米誌『タイム』の調査記者から占領軍に志願。GHQに配属され、わずか22才で憲法草案のメンバーに抜擢された。

 戦前の大日本帝国憲法には、女性の権利について定めた条文は一つとしてなかった。封建的社会で過酷な人生を歩む女性を目の当たりにしてきたベアテさんは、「男女平等」の文言を新憲法の条文に入れるべく奮闘。男女平等、男女同権から妊婦と乳児の公的保護、教育の拡充、児童の不当労働の禁止、長男の単独相続権の廃止などを盛り込んだ、憲法草案を作成したのだ。

 ベアテさんが作った草案の大部分は削られてしまったが、根幹をなす2つの条文は残された。それが以下の憲法24条だ。

《婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない》
《配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない》

◆結婚制度が「家と家のもの」に戻ってしまう

 ベアテさんはアメリカに帰国後、2012年に亡くなるまで、現地で日本文化を発信し続けた。画家の棟方志功や茶道の千宗室を多くの欧米人に知らしめたのは彼女の功績とされている。ベアテさんと生前親交があり、彼女の半生をテーマに舞台『真珠の首飾り』を制作した演出家のジェームス三木さんが語る。

「1998年、『真珠の首飾り』の初演を、ベアテさんが見に来てくれたんです。カーテンコールでは彼女にも舞台に上がってもらい、お客さんはみんな大喜びでした。もちろん、われわれにとってもサプライズ。彼女に会ったのはその時が初めてです。『私は劇中ほどたばこを吸わないわよ』なんて流暢な日本語で冗談を言われましたが(笑い)、『実際にあったことをよく再現している』とお褒めの言葉もいただき、本当に嬉しかった」

 これを機に、ベアテさんが来日するたびに会うようになったという三木さん。

関連記事

トピックス

近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
【エッセイ連載再開】元フジテレビアナ・渡邊渚さんが綴る近況「目に見なえい恐怖と戦う日々」「夢と現実の区別がつかなくなる」
NEWSポストセブン
『続・続・最後から二番目の恋』が放送中
ドラマ『続・続・最後から二番目の恋』も大好評 いつまでのその言動に注目が集まる小泉今日子のカッコよさ
女性セブン
事務所独立と妊娠を発表した中川翔子。
【独占・中川翔子】妊娠・独立発表後初インタビュー 今の本音を直撃! そして“整形疑惑”も出た「最近やめた2つのこと」
NEWSポストセブン
名物企画ENT座談会を開催(左から中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏/撮影=山崎力夫)
【江本孟紀氏×中畑清氏×達川光男氏】解説者3人が阿部巨人の課題を指摘「マー君は二軍で当然」「二軍の年俸が10億円」「マルティネスは明らかに練習不足」
週刊ポスト
田中圭
《田中圭が永野芽郁を招き入れた“別宅”》奥さんや子どもに迷惑かけられない…深酒後は元タレント妻に配慮して自宅回避の“家庭事情”
NEWSポストセブン
ニセコアンヌプリは世界的なスキー場のある山としても知られている(時事通信フォト)
《じわじわ広がる中国バブル崩壊》建設費用踏み倒し、訪日観光客大量キャンセルに「泣くしかない」人たち「日本の話なんかどうでもいいと言われて唖然とした」
NEWSポストセブン
ラッパーとして活動する時期も(YouTubeより。現在は削除済み)
《川崎ストーカー死体遺棄事件》警察の対応に高まる批判 Googleマップに「臨港クズ警察署」、署の前で抗議の声があがり、機動隊が待機する事態に
NEWSポストセブン
北海道札幌市にある建設会社「花井組」SNSでは社長が従業員に暴力を振るう動画が拡散されている(HPより、現在は削除済み)
《暴力動画拡散の花井組》 上半身裸で入れ墨を見せつけ、アウトロー漫画のLINEスタンプ…元従業員が明かした「ヤクザに強烈な憧れがある」 加害社長の素顔
NEWSポストセブン
趣里と父親である水谷豊
《趣里が結婚発表へ》父の水谷豊は“一切干渉しない”スタンス、愛情溢れる娘と設立した「新会社」の存在
NEWSポストセブン
米利休氏のTikTok「保証年収15万円」
東大卒でも〈年収15万円〉…廃業寸前ギリギリ米農家のリアルとは《寄せられた「月収ではなくて?」「もっとマシなウソをつけ」の声に反論》
NEWSポストセブン
SNS上で「ドバイ案件」が大騒動になっている(時事通信フォト)
《ドバイ“ヤギ案件”騒動の背景》美女や関係者が証言する「砂漠のテントで女性10人と性的パーティー」「5万米ドルで歯を抜かれたり、殴られたり」
NEWSポストセブン
“赤西軍団”と呼ばれる同年代グループ(2024年10月撮影)
《赤西仁と広瀬アリスの交際》2人を結びつけた“軍団”の結束「飲み友の山田孝之、松本潤が共通の知人」出会って3か月でペアリングの意気投合ぶり
NEWSポストセブン