2017年は、北朝鮮の暴走が日本と世界を揺るがせた年だった。実際、11月のトランプ大統領の東アジア歴訪でも、各国で「北朝鮮への対応」が話し合われた。そうした中、金正恩委員長やトランプ大統領、プーチン大統領といった国家指導者について論じた『悪の指導者(リーダー)論』(小学館新書)を上梓した山内昌之・東大名誉教授と作家の佐藤優氏は、金正恩と北朝鮮の今後について次のように指摘している。
「金正恩は、リビアのカダフィやイラクのフセインといった、(アメリカと)ぎりぎりのゲームをやってきた二人の独裁者の末路を見てきました。金正恩はこのまま座して死を待つことはしません。核を使うという選択肢を歴史において初めて選びかねない男です。これが金正恩の怖さです」(山内氏)
では、北朝鮮が核を使う前にアメリカが先制攻撃する可能性はあるのか。佐藤氏は、先制攻撃は難しいと分析する。
「アメリカが先制攻撃する場合は、生命至上主義に則って、まず、(北朝鮮の攻撃対象となる)在韓アメリカ人を避難させる必要があります。避難に2週間程度はかかるでしょう。その間に北朝鮮が動きを察知して攻撃を仕掛けてきます。こうした事情から、アメリカは先制攻撃ができません」
では北朝鮮に核使用をさせないためにはどのような策があるのか。佐藤氏が続ける。
「北朝鮮と交渉できるのはアメリカしかありません。トランプのアメリカファーストという観点からすれば、こういう流れになるでしょう。すなわち、アメリカに届く大陸間弾道ミサイルの開発はやめさせる。核は黙認する。日本や韓国には届く中距離弾道ミサイルも黙認する。私たち日本人にとっては、とても嫌なことです。これは日本が北朝鮮の核保有を認めるという意味ではありません。日本は北朝鮮に核を断念させる努力を放棄するというわけでもありません」
さらに、核が使用されない場合も、日本には厳しい状況が待ち受けていると山内氏は指摘する。