日本中を震撼させた神奈川県座間市の9人遺体事件。バラバラに切断した遺体をアパートの室内に置いていた事件そのものの異様さだけでなく、SNSで知り合った容疑者に次々に誘い出されていたという事実が、世の親たちを恐怖に陥れている。
「高校生の娘がいるけれど、自分の部屋にこもってスマホをいじっていると、誰とどんな会話をしているのかまったくわからない。『もしかするとウチの子が被害者になっていたかも』と思うと不安で仕方ない」(40代主婦)
大学生の娘がいる50代の主婦も、動揺を隠せない。
「子供が安全な環境で育ってくれるようにと、人間関係がしっかり見える小中高一貫の学校に入れました。でも、大学に入ってからは交友関係がまったくわからなくなってしまった。大学の友達でフルネームが言えるのは、1人だけ。私が学生だった頃と比べると親の知らない世界が多すぎると感じます。とくに、SNSで繋がっているだけの相手が“友達”という感覚は、私にとって未知のものです」
◆小学生の3割が“ネットの人に会いたい”
84.2%。これは2016年の内閣府調査による小学生のネット機器保有率だ。大学生や高校生はもちろんのこと、今や小学生もスマホやタブレット、ノートパソコンを使いこなし、SNSなどのコミュニティーサイトを利用する時代になった。
大人になってからネットに触れるようになった親世代とは違い、彼らは生まれた時からネット環境があった、いわば「デジタル・ネイティブ」世代。オンラインでのコミュニケーションも抵抗なく受け入れることができる。子供たちのネット事情に詳しいIT企業「グリー」社会貢献チームの小木曽健さんが語る。
「スマホの普及によって、子供たちの人間関係は飛躍的に広がりました。話したいと思えば、どんなに遠くの見知らぬ相手でも、年齢が離れていても、言葉を交わすことができる。私自身、SNSを通して2000人くらいの中高生たちと交流していますが、教師でもない40代のおじさんと中高生が垣根もなくコミュニケーションできるなんて、昔ならありえないことだと思います」
顔や素性のわからない相手と実際に会うのは怖いという感覚も、今の子供たちにとっては古いのだろう。調査会社のマクロミルが2017年に行った「未成年の携帯電話・スマートフォン利用実態調査」によれば、小学生の3割以上が「ネットで知り合った人に会ってみたいと思ったことがある」と回答している。ITジャーナリストの高橋暁子さんが言う。