“健康増進のため”といえば、受け入れられやすい──こんな魂胆がミエミエなのが、たばこ税の引き上げである。11月28日、自民党税制調査会が2018年度の税制改正に向けた非公式会合を開き、2010年以来となるたばこ税の増税方針を打ち出した模様だ。
いま検討されている増税案のひとつは、2018年から4年ほどかけて紙巻きたばこ1本あたり1円ずつ増税していき、最終的には1本3円の増税を行うというもの。結果、1箱(20本入り)440円のたばこ価格は500円まで上がることになる。さらに、市場が拡大している加熱式たばこについても増税を行う方向だという。
そもそも、たばこに含まれる税金は過去に行われた幾度もの増税により膨れ上がり、現在、1箱440円の商品なら約277円、割合にして実に63.1%を消費者が負担している。
その内訳を見てみると、「国たばこ税(24.1%)」、道府県・市町村たばこ税に分けられる「地方たばこ税(27.8%)」、その他、「たばこ特別税」や「消費税」が含まれる。税収の合計は年間2兆円規模あり、国と地方の歳入の約2%を占める貴重な財源となっている。
財務省としては今回の増税で2000億円を超える税収増を見込み、2019年10月の消費税増税時に導入される予定の「軽減税率」で減る税収の穴埋めにしたい算段だ、
しかし、増税すればするだけ税収が増えるという単純なものではない。香川大学名誉教授の上杉正幸氏がいう。
「本来、増税は税収増を目的にして行われるものです。たばこ税も最近では1998年、2003年、2006年、2010年と4度増税され、確かにいずれも増税直後は税収増になっていますが、数年たつと増税前の税収規模に戻っています。事実、1996年と2016年の税収を比較すると、2兆1300億円と2兆1200億円でほぼ同程度になっています。
このことから見ると、税収増のために増税するという主張はたばこ税には当てはまらないことになります。たとえ恒久的な税収増につながらなくても、何とか2兆円を割り込まないように増税を繰り返すという財政的な意図があるのかもしれません」
では、冒頭の「健康増進のため」という目的は果たされているのか。度重なる増税負担と国民の健康意識の高まりによって“たばこ離れ”が進んでいるのは確かだ。1980年に70%あった男性の喫煙率は年々低下し、2017年には28%になっている。
だが、たばこ税の増税によって禁煙する人が増える一方で、たばこが原因による疾病が減り、国民医療費の高騰を抑えられているのかといえば、それも疑わしい。