今年5月に成立した「改正介護保険法」は、介護が必要な高齢者の「自立支援」や「要介護状態の重度化防止」を高らかに謳っている。法改正によって本当に高齢者の健康寿命が延びるのであれば歓迎すべきだが、現場からはすでに疑問の声が上がっている。2018年4月の施行によって、いったい何が起ころうとしているのか。
2018年のある日のこと──。都内に住む50代男性のもとに突然、80代の母の要介護区分の変更を知らせる通知が届いた。去年までは「要介護度3」だったのが「要介護度2」に下がるというのだ。母には1年ほど前から認知症の初期症状があり、ひいき目に見ても、改善しているとは思えない。
判定結果に疑義があるケースのために、自治体は「不服申し立て」の制度を用意している。男性は必要書類を揃えて区の介護保険課に提出したが、数か月後に届いたのは「要介護度2への変更は妥当」という紙切れ1枚だった。
母は日に日に老いている。介護保険で賄っていた訪問介護やデイサービスの回数は減らせない。これから、どうなるのか──。
そんな袋小路に陥る人が、2018年に続出することが危惧されている。きっかけとなるのが、4月に施行される改正介護保険法だ。介護雑誌『あいらいふ』の編集長・佐藤恒伯氏が言う。
「2000年に介護保険制度がスタートして以来、おおむね3年ごとに法改正が行なわれてきました。基本的な流れは、介護費用を圧縮すべく、サービス給付の“蛇口”を締めていくというもの。来年の改正も、同じ文脈に位置づけられます」
まず自己負担の増加だ。現在、介護保険利用者の自己負担は1割だが、2015年の改正で年収280万円以上の人は2割負担となった。2018年の改正ではこれに加え、年収340万円以上の利用者については3割負担となる(8月から実施)。