北朝鮮が発射した弾道ミサイルが日本海に落下したのは11月29日の早朝4時過ぎのこと。安倍晋三・首相は午前6時前には官邸に移動し、颯爽と記者団の前に現われ、「ミサイルの動きを完全に把握し、危機管理に万全の態勢をとりました」と胸を張った。
今回は、日本列島の手前で落下することが分かっていたため「Jアラート(全国瞬時警報システム)」は鳴らなかったが、「A(安倍)アラート」は健在だった。
これは“安倍首相が公邸に泊まった翌日にミサイルが落ちる”という事実からできた永田町用語である。前回の8月に続き、今回もミサイル発射の前日に公邸に泊まっていた。
「北朝鮮のミサイル発射の動きについて、政府は米国と韓国から情報収集しており、事前に把握することができたため、安倍総理は準備万端だった。取材時は、早朝にもかかわらず血色がよく、力強くコメントしていた」(全国紙政治部記者)
安倍首相の士気が上がるのには理由がある。今年の6月以降、森友・加計問題によって大きく支持率を落とした安倍政権は、北朝鮮のミサイル発射により国民の危機意識が高まった結果、支持率を回復。解散総選挙を後押しをしたともいえる。
盟友の麻生太郎副総理も、先の衆院選結果について、「北朝鮮のおかげもある」と発言し物議を醸した。
現在も特別国会で野党から連日、追及を受けている安倍首相だが、このミサイル発射により、再び追い風が吹く可能性もある。だが、笑っていられる状況でもない。安全保障に詳しいジャーナリストの織田重明氏がいう。
「北朝鮮のミサイル開発は日進月歩。今回は最高高度4475キロメートルと過去最高を記録し、米国本土を射程に収めることも可能になった。また、『MIRV(マーブ)』という新技術を試験したとも言われている。これは弾頭が複数に分離して違う目標に着弾するもので、迎撃されにくいという面も持つ」
これらの脅威がさらに増した時、安倍首相の顔色はどうなっているだろうか。
※週刊ポスト2017年12月15日号