女性セブンの名物記者“オバ記者”こと野原広子が、アラカンの現実を気の向くままに告白する。今回のテーマは自ら経験した「肉体労働のパート」についてだ。
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実は私、肉体労働のパートを2回、しているんだわ。1回目は40才のときに早朝の弁当詰めを4か月。2回目は48才でビジネスホテルのベッドメイクを8か月。
それぞれ、のっぴきならないお金の事情があったとはいえ、「ほら、そこの彼女、何やってんだ!」と頭ごなしに怒鳴られたり、「そこ、じゃま。あっち行け」と小突かれたり。
這いつくばって床の掃除をしている時に「こっちも汚れてるよッ」と上からきつく言われた時は、「何の因果で…」と涙ぐんだかどうかは忘れたけど、自分の現状は骨身にしみてわかったね。
ホテルのベッドメイクというと、シーツ替えをする職業と思いがちだけど、それはほんの一部。重労働はお風呂を丸洗いしたあと、シーツやバスタオルを使って水滴を拭き上げること。私はどんなに必死にやっても4時間でノルマの13部屋が終わらないのに、同じ時間内に17部屋の掃除をする人がいたの。
気になって、「トッププレーヤー」と呼ばれる70才の人の仕事ぶりを見に行ったわよ。スリムな体をどれほど速く動かしているのかと。
とんでもない。ふわりと机の上に手をのせたら、さら~と動かして、どこにも力が入っていない。まるで太極拳をしているよう。どんな世界にも、頭ひとつ抜けたエリートがいるんだなと、自分の持ち場を離れていることも忘れて見入っちゃった。
だけど一般のエリートと違って時給は限られていて、私がパートをしたホテルは、ノルマを達成してもしなくても、時給は当時980円でみな同じ。13部屋以上の掃除をすると、ひと部屋当たり150円の手当が出たけれど、どんなに頑張ったところでひとり暮らしでは身が立たない。
東京都の最低時給は今年の10月から958円だけど、この額を前にしたら労働のよろこび、清々しさなんてたわごとにしか聞こえないって。この世知辛さをどうしてくれよう。
※女性セブン2017年12月14日号