排尿は毎日必ずするものだからこそ、色や臭い、出方の変化を細やかに知ることができる。日本医科大学付属病院泌尿器科部長の近藤幸尋医師は「尿は自分の健康状態を知るための重要なバロメーターです」と語る。
「尿は全身を循環する血液が元になっているため、全身の健康状態の情報が詰まっています。尿を調べることは、どんな病気に罹患しているのかを知る重要な手がかりとなります」
たとえば、寒くなってくるとトイレに行く頻度が増える。それ自体は自然なことだが、回数が増えすぎる場合には注意が必要だ。尿は2~3時間に1回程度の頻度で出るのが一般的だとされている。
「1日あたり8回程度トイレに立つのは正常の範囲。これが1日10回以上になってくると、医学的には『頻尿』とされます」(同前)
東邦大学医療センター佐倉病院内科学神経内科の榊原隆次准教授の研究によると、認知症を発症すると頻尿を起こすケースが多いという。認知症により大脳皮質に異変が起き、本来必要でない排尿指令を膀胱に出してしまい、頻尿につながるというのだ。
頻尿の場合には糖尿病の疑いもある。腎臓病や透析の専門医で、ひらくクリニック院長の吉田啓氏の話。
「糖尿病になると、血糖値が上がりすぎた血液を薄めるために、水分を多く摂るようになる。喉が渇いて無意識に水分を摂りすぎてしまうことによる頻尿は糖尿病のサインといえます」
1日10回以上という頻尿の基準は起きている時間帯の話で、睡眠時には別の基準がある。