夜眠れない、深く眠れないとなれば、日中に仕事や子育てがある私たち世代には深刻で、すぐにも策を講じたくなるが、高齢者の場合はあまり神経質になりすぎない方がいいと、睡眠総合ケアクリニック代々木理事長・井上雄一先生は言う。
「夜間の不眠や中途覚醒も、ごく自然な老化現象として高齢者の多くに起こることです。高齢になり活動量が減ることで、若い頃より必要な睡眠時間が少し減ると考えてもよいのです。睡眠は脳や体の疲れを癒し、機能を回復させるために不可欠な営みですが、夜の睡眠の体裁より、昼間、元気で機嫌よく活動できるかどうかが大切なのです」(井上さん・以下「」内同)
快眠のための“健康食品”“グッズ”といったものもたくさんあるが、誰にでも効く定番というものはない。自分に合ったものがあれば利用するというつきあい方がよいという。
「眠ることにあまりにこだわりすぎると、かえって眠れなくなることもあります。昼間の生活に支障がなければ“気にしない!”というくらいのおおらかな気持ちでいる方がいいでしょう」
◆つらい不眠、高血圧の人はかかりつけ医や専門医へ
ただし高齢者の不眠には、気をつけるべきこともある。
「不眠が続くと、血圧や血糖値が上がりやすくなります。高血圧の治療で降圧剤がなかなかきかず、実は不眠が隠れていたといったケースもよくあります。
また不眠はうつと関連があるともいわれています。不眠が長く続いてうつを発症したり、うつの前駆症状として不眠になったりすることもあります。
日中に強い眠気やだるさがあるなど生活に支障があったり、つらい症状が長引くときは受診しましょう」
不眠の治療といえば、薬のことも気になる。
「クリニックでは、まず生活の見直しを指導しますが、よくならない場合は睡眠薬を処方します。認知症がある場合、睡眠薬によって覚醒度が悪くなり、認知症状が悪化したように見えることもあり、適切な薬を選ぶ必要がありますが、最近は認知症状に悪影響のない薬も出て来ています。睡眠薬の処方については、精神科医や心療内科医、睡眠の専門医が詳しいので、ぜひ相談をしてください」
※女性セブン2017年12月14日号