1995年10月から続くドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系、日曜14時~)の番組作りはカメラを回す前に、取材対象者との信頼関係を築くところから始める。それは事件や社会問題だけでなく、市井の人々の人間ドラマ、生き方など、すべてのテーマにおいて一貫している姿勢だ。
時代の移り変わりとともに、扱うテーマの傾向も少しずつ変化してきた。もともとは22年前、日曜の昼下がりにサラリーマンのお父さんたちがくつろいで見られるドキュメンタリー番組というコンセプトで始まった。記念すべき第1回は『すべてはあの一球から…野茂英雄2982球の真実!』(1995年10月)。第2回は『オウム真理教4人の幹部と私たちの戦後50年』で、視聴率10.1%をマークした。
2代目チーフプロデューサーが担当した約6年間はバブル崩壊後の混沌とした時代を反映し、ホームレスなど貧困をテーマとして扱う回が目立った。あるひとりの的屋の生涯を追った『テキヤぶるーす』(1997年3月)はシリーズ化され、名作中の名作とされた。『借金地獄物語』(1997年9月)は、歴代最高の視聴率15.9%を叩き出した。
4代目チーフプロデューサーの時代は、初代からの路線を生かしつつも人情路線のテイストを濃くしていく。『母さん! なぜ僕を捨てた』『花嫁のれん物語』『上京物語』などの人気シリーズが生まれたのもこの頃だ。
このような名作が生まれる一方、2011年の東日本大震災を機に視聴者がテレビに求めるものが変化し、視聴率が次第に落ちていく現実もあった。2015年に5代目チーフプロデューサーに就いた張江泰之氏は、視聴率アップのためのテコ入れを始める。
「視聴習慣をつけてもらうために、まずオープニングのピアノ曲、エンディングの歌を固定しました。不思議なことに、エンディング曲『サンサーラ』が“生きてる生きている”と流れると、視聴率が0.5%上がってくるんです。小説でいえばエピローグ。この歌がエピローグの合図となり、視聴者を惹きつけるのではないでしょうか」(張江氏)
※週刊ポスト2017年12月15日号