排尿は毎日必ずするものだからこそ、色や臭い、出方の変化などを細やかに知ることができる。日本医科大学付属病院泌尿器科部長の近藤幸尋医師は「尿は自分の健康状態を知るための重要なバロメーターです」と語る。
「尿は全身を循環する血液が元になっているため、全身の健康状態の情報が詰まっています。尿を調べることは、どんな病気に罹患しているのかを知る重要な手がかりとなります」(近藤医師)
血液検査も病気の予兆や進行をつかむうえで非常に有効だが、病院に行って採血して検査しない限りわからない。一方、尿の場合、毎日、自分でその変化を“観察”できる。
「詳細に調べるには採取した尿を専門の機関で検査する必要がありますが、自分で尿の状態を観察するだけでも、重大な疾病の“予兆”に気づけるケースは存在します」(同前)
ではおしっこがどんな状態なら病気の予兆なのか。たとえば、食べたものによって尿の匂いは微妙に変化するものの、フルーツが腐ったような臭いが便器から立ちのぼってきたら要注意である。腎臓病や透析の専門医で、ひらくクリニック院長の吉田啓氏の話。
「糖尿病になると、リンゴが腐ったような甘酸っぱい臭いがすることがあります。これは、糖を代謝できないことで発生する『アセトン』の臭いです。本人が気づくことは少なく、次にトイレに入った人に指摘されることが多い。また、膀胱炎になると細菌がアンモニアを産出するため、鼻を突く強烈なアンモニア臭がすることもあります」
毎日ただ漫然と用を足すのではなく、臭いにも注意する。それは一種の“予防医療”といえそうだ。
※週刊ポスト2017年12月15日号