現在放送中の3つのテレビ朝日の長寿ドラマ『ドクターX』、『相棒』、『科捜研の女』は、それぞれ高視聴率を記録。衰えない人気を見せつけている。『相棒』はseason16、『科捜研の女』は放送開始から18年、『ドクターX』は第5シーズンだ。
この3作品に共通項がある。現在放送中の『科捜研の女』シリーズでは「民泊」、『相棒』では「不正入試」、『ドクターX』では「患者ファースト」「忖度」「ゆとり世代」など、時流に沿ったキーワードや問題が取り込まれているのだ。コラムニストの今井舞さんはこう話す。
「話題の出来事をうまく取り入れていて、“あぁ、この話、この前ニュースで見たアレだわ”と視聴者が反応しやすい工夫が見られます。そうした問題を仰々しく描くのではなく、殺人の動機や組織への反発心などにさりげなく盛り込む。その絡め方は見事です」
放送開始から欠かさず番組を見ているという“芸能界きっての『相棒』ファン”であるタレントの麻木久仁子も、時代性こそが魅力と言う。
「時事ニュースをただ入れ込むというだけでなく、その時々の社会への問題提起をしっかり盛り込んでいます。でも決して上から目線だったり、正義の押しつけだったりしない。あくまでエンタメなんです。あぁ楽しかった、と見終わった後にじんわりと問題意識が湧くような作りは、さすがだなぁと思っています」
◆年月を経てもブレないキャラ設定
「科学は嘘をつかない」を信条とし、真相究明のために危険を顧みずひたすら突き進む『科捜研の女』の榊マリコ(沢口靖子)。優雅な手つきで紅茶をたしなみ、「最後に1つだけよろしいですか?」と犯人を執拗に追い詰める『相棒』の杉下右京(水谷豊)。群れや権威、束縛を嫌い、スキルを武器に、「私、失敗しないので」が決めぜりふの『ドクターX』の大門未知子(米倉涼子)。それぞれの核となるキャラクター像は、シリーズを重ねても決してブレることがない。共通するのは、自分の理想や理念を曲げることなく、社会や組織に切り込んでいく姿。それは本音が言いづらい現代社会で、私たちが“こうありたい”と思う理想像でもある。
『ドクターX』の内山聖子ゼネラルプロデューサーは言う。
「どんな仕事でも組織に属していたり上司や師匠がいれば、年功序列があって封建的で“忖度”や“御意”で動かなければいけないのが今の日本社会です。そんな窮屈な壁を蹴散らしていく大門未知子の姿は、視聴者のかたが普段思っていても言えないことを代弁しているように感じてもらえているからこそ愛されるキャラクターになったんだと思います」
変わらないキャラがいる安心感が長寿の理由と言うのはコラムニストの亀和田武さん。
「どのドラマも、平日午後の時間帯で再放送をしていますね。シーズンも放送回もバラバラですが、不思議とどれを見ても楽しめる。強烈なキャラクターが常に変わらずいる世界だからこそ、どこからでも入りやすいのでしょう」
※女性セブン2017年12月21日号