映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづった週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』。今回は、モデル出身の役者、柴俊夫が役者をやっていきたいと思うようになったきっかけとなる特撮番組『シルバー仮面』での実相寺昭雄監督や岸田森さんとの出会いについて語った言葉を紹介する。
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柴俊夫は1970年、テレビドラマ『ゴールドアイ』(日本テレビ)で役者デビューしている。
「役者になりたくてなったわけじゃないんですよ。今でも本当に役者に適合しているのかと思うところがあるくらいでして。
大学の時にモデルのバイトをしていて、これは一生の仕事じゃないなと思っている時にスカウトされたんです。それで、『いいじゃない。とりあえずやってみよう』と。本当はホテルマンになりたかったんですが、とんでもない所に行けと言われましてね。それで役者を続けました。
ただ、やればやるほどわけが分からなくて。セリフの勉強もしていなかったので、棒読みしかできてなかったと思います」
1971年には特撮番組『シルバー仮面』(TBS)に主演した。
「主役と言われても、嬉しいというよりは『へえ、そうなんだ』という感じでしたね。五人兄弟の話で、『僕がいなくても篠田三郎がいる。こっちの方が脚光を浴びるんだろう』となんとなく感じていましたから。当時の僕は柄だけでやっていたので芝居をしてもあまりできないですし、それでしょうがないと。
役者のことを学んでみようと思うきっかけになった作品でした。実相寺昭雄監督に岸田森さん。スタッフたちも含めて、凄い人たちに会って何かを感じたんです。子供番組だけど子供番組じゃなかったんですよ。ストーリー性がある。それに画面が暗い。カメラマンも照明も、みんな自信をもっていました。そういう総合芸術の面白さを知って、役者をやっていきたいと思うようになったんです。
ただ、学ぼうと思ってもそのやり方すら分かりませんでしたから。岸田さんには毎日天井に向かって腹式呼吸することと新聞を読むように言われました」