高齢になり体に不自由が出てくる、家族の手を煩わずらわせるようになる、あるいは、親しい人との死別に向き合う親世代。育児や仕事に追われながら更年期を迎え、元気だった親が要介護になる現実を突きつけられる子世代。
介護が始まるころは親も子も心が痛み、うつうつとした気分にとらわれがちだ。そこで、高齢者と中高年のうつ予防について医療法人山口病院・精神科部長の奥平智之さんに聞いた。
「中高年の女性に多いのは、一般的には更年期のうつです。閉経前後に卵巣機能が低下し、女性ホルモンのバランスが崩れることが原因といわれています。しかし、女性ホルモンは正常でも、『隠れ鉄欠乏』により、うつやイライラ、食欲不振、疲れやすさなどの原因となることがあります」
そう奥平さんは語る。一方、高齢者のうつは、私たちの抱くイメージとは違う形で表れることがあるようだ。
「高齢者のうつは、若い人たちとは違い、憂うつ感より体の不調や不安感を訴えるのが特徴です。たとえば腰や脚が痛い、しびれる、胃がムカムカするなど、実際に痛みがある場合もありますが、原因なく訴え続けるときはうつ病が疑われます。さらに『犯罪を犯した』『物を盗まれた』など、認知症にもある妄想を伴うこともあります。また認知症の初期にうつ症状が出ることも。初期の頃は専門医でもうつ病か認知症かの鑑別が難しいのです」
「また始まった」…で済ませるのではなく、老いた親世代の不調の訴えには、慎重に耳を傾ける必要がありそうだ。
※女性セブン2017年12月21日号