2012年4月23日午前8時、京都府亀岡市で集団登校中の児童と保護者の列に軽自動車が激突。このワゴン車暴走事故で中江美則さん(54才)は長女の幸姫さん(当時26才)を亡くし、孫の蒼愛さん(当時6才)も重傷を負った。
幸姫さん含め3人が死亡、7人に重軽傷を負わせた重大事故を起こした少年たち。ハンドルを握っていた少年A(当時18才)は居眠り運転のうえ無免許。しかし危険運転致死傷罪には問えず、刑の軽い過失運転致死傷罪での立件となった。
Aは懲役5~8年の不定期刑で服役中だが、同乗していた少年BとC(ともに当時18才)、無免許と知りながらAに車を貸した少年D(当時18才)は、道路交通法違反幇助の容疑で逮捕され、少年院での保護処分相当として家庭裁判所に送致。3人とも執行猶予が付き、現在は実家こそ出たものの事故現場の近くで生活している。
11月下旬、本誌は3人の命を奪った彼らの元を訪れた。危険運転による悲惨な事故が多発する現状について、「かつての当事者」だからこそ語れる言葉があると考えたからだ。事件当時Aに車を貸したDは、本誌記者が話しかけると、不審そうな表情で応対した。
「なんですか?」
──Dさんですよね?
「そうですけど」
──最近、車の暴走事故が多発していますが、過去、同様の事故に関与した身として、どのように感じていますか?
「はい?」
──危険運転をする人に対して、伝えたい言葉はありませんか?
「あの、これって任意ですか?」
──取材です。
「じゃあ、すいませんけど」
そう話すと、黒のワゴン車に乗り込んで去って行った。続けて向かったのは、Cの自宅。インターホン越しに応じた彼に対しても同様に、取材であることを伝えた上で、昨今の危険運転を巡る現状について尋ねたが、「うん」「はぁ」と生返事を繰り返すばかり。だが、次の質問を投げかけると、声色が変わった。
──被害者遺族に対して、何か言葉はありませんか?
「あん? もういいから帰ってくれる?」
──遺族のかたへ謝罪はないのでしょうか。
「もう早く帰れや」
それだけ言うと、インターホンが切れた。