女性セブンの名物還暦ライター“オバ記者”こと野原広子が、アルバイトを始めるのだという。60才にして面接に挑んだ。非常に良い面接ができたという。
* * *
地下鉄ホームのベンチで、70代とおぼしき女性から「時給1000円~」と書かれたチラシを受け取ったのは、街がざわつきだした師走初旬のこと。
あの日から「登録だけでもしておけば? 80才過ぎてもできるよ」というおばちゃんの声が耳の奥に残って消えないの。
「1人にビル丸ごと任されるから面倒な人間関係がないし、今日は3階、明日は4階って自分のペースで重点的に掃除する階を決められるのよ」
何度も思い出したせいか、自転車で職場のビルに向かっている自分が目に浮かぶよう。
◆ホテルの面接に現れたのは30代のさわやか青年
そんなわけで、この年末年始、私はアルバイトをすることにした。“金欠”のほか、理由はいくつかあるけど、60才のなまった心と体に喝を入れたいというのもそのひとつ。で、スカウトしてくれたおばちゃんの会社に真っ先に電話をしようとしたけど、「80才過ぎてもできる」なら、今じゃなくてもいいかなと。
あれこれ考えた末、もう一度ホテルの客室掃除にチャレンジしたくなった。そこで、就職情報誌を見て、年末年始に短期で働けるホテルを探して電話したら、「明後日、履歴書をもってきてください」。
大きなホテルチェーンの対応がいちばん早かった。さっそく本社を訪れると、面接に現れたのは30代の笑顔がさわやかな青年!
私の履歴書を見るなり、「ほう、経験者ですね」と、わずか8か月の客室掃除のバイト歴に目を止めたの。出身学校や職業にはいっさい触れず、「勤務ホテルの目と鼻の先に住んでいるんですね」とニッコリ。
前にバイトしていたホテルに、私がどんなに頑張っても届かなかった凄腕のパートがいたことを話すと、「アハハ、面白いですねえ」と大笑いしてくれた。
「時給は、年末年始の特別料金で1350円です」と言われるや、条件反射的に「やりますッ」と身を乗り出していた。含み笑いの面接官氏の「制服のサイズはS、M、Lの…」という言葉に、恭しく「LLでお願いします」と頭を下げる私。
恐ろしく呼吸の合う相手。そう思ったのは私だけではなかったはず。30代のさわやか青年も「ほとんど採用ですね」と片目をつむってみせた。とは言ったものの、正式な結果は2日後。これで落ちたらどうしよう!?
さてさて。私が、体を動かして毒を出す仕事に就けたかどうかは次回で。
※女性セブン2018年1月1日号