関東郊外のとあるアパート前。元教師の男性が時折目を潤ませ、慎重に言葉を選んで語り始めた。「相手やご両親に対して、申し訳ないという気持ちだけです。自分が未熟だったということに尽きます…」。渦中の当事者が、初めて口を開いた──。
静かな法廷に、裁判長の声が鳴り響く。
「原告と女子生徒は将来を見すえて真剣に交際しており、原告が性的欲求を満たすために行為に及んだとは認められない。処分は著しく妥当を欠いている」
11月24日、さいたま地裁。埼玉県教育委員会から懲戒免職処分を受けた公立中学元教師の男性(25才)が、県に処分の取り消しを求めた裁判の判決が言い渡された。
男性は大学生だった2015年3月、アルバイトをしていた県内の学習塾で知り合った当時15才の女子生徒と交際を開始。埼玉県の教員として採用された同年4~7月の間、自宅などで女子生徒を抱きしめたりキスをしたほか、自宅アパートに宿泊させた。
一連の行為を問題視した県教育委員会は同年12月、地方公務員法第29条の「信用失墜行為」に当たるとして男性を懲戒免職処分にした。これを不服とした男性が懲戒取り消しを求めて訴訟に踏み切ったのだった。
この日、言い渡されたのは「懲戒免職を違法と認定し、処分を取り消す」という、男性の言い分を全面的に認める判決だった。
見事、裁判で勝利を勝ち取ったこの男性こそ、冒頭に登場した元教師のA氏である。12月初旬のある夜、本誌・女性セブンの直撃にA氏が応じた。年齢よりも温和で落ち着いた雰囲気を感じさせるA氏は、現在の胸中を訥々と語った。
「今は相手と連絡を取っていません。県が控訴するという記事も出ていましたし、まだすべての裁判が終わったわけでもありません。自分が立ち直ったという気もないですし、しっかりとお話しするには、もう少し時間が必要です。当時のことは時々思い出しますが、まだあまり振り返りたくないんです」(A氏)
A氏は誠実さのうかがえる口ぶりで、「せっかく来ていただいたのに申し訳ありません」と何度も繰り返した。
A氏と生徒の間には何があったのか──。裁判資料には、女子生徒との恋に真摯に向き合うA氏の姿が克明に記されていた。以下、裁判資料を踏まえてふたりの恋の一部始終を再現していく。
◆この5か月は今まででいちばん幸せでした