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卑劣なデートレイプドラッグ 被害が表面化しにくい理由

普通にお酒を飲んだだけと思っていた

「デートレイプドラッグ」とは、特定の薬物を指す言葉ではない。相手を性的に支配し搾取するために、同意を得ないまま摂取させる薬物などのことだ。映画プロデューサー、ワインスタインによるデートレイプは、食事に誘って睡眠薬を飲ませるのが常套手段だった。世界中で性的搾取の告発が相次ぐなか、セレブだけでなく一般人からも被害を訴える声が、ここ日本でも大きくなりつつある。ライターの森鷹久氏が、被害者の告白をきいた。

* * *
「全く面識がない人ではない。むしろ、人間関係がある程度出来上がった時にやられてしまうんです」

 最近になって日本でも語られるようになった「デートレイプドラッグ」の存在。相手を酩酊、もしくは睡眠など”普通ではない状態”にさせてレイプに及ぶ為の“ドラッグ”のことだ。使用されるのは違法なドラッグだけとは限らない。合法だが入手手段が違法なもの、身の回りにあるが正当な使用方法ではないものもある。

 危険ドラッグが再び「世に蔓延している」との情報通からのリークを元に取材していた筆者は、偶然にも数名の「デートレイプドラッグ」被害者から話を聞くことが出来た。そして驚いたのは、そのうち複数の女性が冒頭のような証言をしたことだ。

 例えば「女性が男性から酒を飲まされて性的暴行を受けた」という話が出ると、同情意見が多勢を占めても、男についていく方が悪い、女性にも隙があったのではないか、などといった論が噴出する。もちろん当事者のみにしかわからない部分も多く、第三者的な視点からでは明確に善悪をつけられない場合もあるが、この「デートレイプドラッグ」を用いたことが疑われるケースの場合、加害者側の計画的かつ陰湿な犯行形態と、その動機が浮かび上がってくる。

 都内の飲食店でアルバイトをしていたAさん(20代)は、同店グループの社員であり、店長だった既婚者の男性(40代)から飲みに誘われたことをきっかけに、肉体関係を持ってしまった。酒好きだったこともあり、また「職務の延長線上の事」であるとして、店長からの誘いを断らなかったAさんだったが、当時は”不思議なことが起きた”としか思っていなかった。

「生ビールを二杯とチューハイ、焼き鳥を少し食べただけで、視界が狭くなったように感じると、その数分後には記憶が飛びました。気がつくと、ラブホテルのベッドに横たわっていて、店長が横で寝ていたんです」

 下腹部の違和感と、ベット脇のゴミ箱に捨てられていた使用済みの避妊具を見て「酔っ払ってやってしまった」と自責の念に駆られたAさん。翌出勤日に自ら店長に謝罪したが……。

「店長は“私が酔って店長を誘った”と言ったんです。店長には男性的な魅力を感じたことがないだけでなく、酔うと性欲が減退する私が、本当にそんなことをしたのかと疑問に思いました。さらに、お酒三杯で記憶を飛ばした事もなかった。でも、店長の奥さんにも悪いと思い、とにかく謝りました」

 その後、店長は勤務中のAさんの体を触ってくるようになった。飲みの誘いを断ると「あの時みたいに……」などとセクハラ発言も浴びせ続けられ、同僚にも「A子は酔うとすごい」などと吹聴までされた。耐えきれなくなったAさんはその数週間後に店を辞めたのだった。

 それから二ヶ月後、かつてのアルバイト先の同僚から入った連絡により、自身が被害者である事を知ったのである。

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