人権派弁護士のまま韓国大統領となった文在寅氏は、北朝鮮への融和政策を変えようとしない。国際社会が「北朝鮮包囲網」で連携するなか、人道支援の実施を決め、政権スタッフも親北派ばかりを起用し、「北朝鮮の理解者」を内外にアピールしていると元駐韓大使の武藤正敏氏は指摘する。このままだと、韓国にはどんな未来が待っているのか、武藤氏が解説する。
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北朝鮮が自ら核ミサイルの開発をやめることは残念ながら考えられない。現在の金正恩体制下で核ミサイル開発が頓挫すれば北朝鮮国内で金正恩委員長に対する不満が一気に広がり、クーデターを招く。核ミサイルを是が非でも完成させ、米国から譲歩を引き出す以外に体制の維持はできないと考えているはずだ。
文大統領は「圧力重視の強硬姿勢ではこれまで何も成し遂げていない」というが、それは中国が制裁に参加していない時点でのこと。今回、中国は北朝鮮への経済制裁に参加する姿勢を見せている。
実利を重視する中国は、北朝鮮が不安定化し中朝国境を越えて難民が押し寄せることも、軍事衝突が起きて在韓米軍が北上することも望んでいない。しかし、今や北朝鮮を支えるコストのほうが高くつくと踏んでいるはずだ。
こうした世界の変化が、文大統領にはまるで見えていない。
それでも「親北」を掲げる文政権は、仮に北朝鮮が核ミサイルを持つことになっても戦争だけは避けようとしているのではないか。その先には「赤化統一」が待ち受け、韓国国民は北朝鮮のような暗黒の生活を送ることになるのを理解しているだろうか。
●むとう・まさとし/1948年東京都生まれ。横浜国立大学卒業後、外務省入省。在大韓民国大使館に勤務し、参事官、公使を歴任。アジア局北東アジア課長、在クウェート特命全権大使などを務めた後、2010年、在大韓民国特命全権大使に就任。2012年退任。著書に『日韓対立の真相』、『韓国の大誤算』、『韓国人に生まれなくてよかった』(いずれも悟空出版刊)。
※SAPIO2017年11・12月号