がんなど命にかかわる病気にかかった際に、医師が患者に行なう「余命宣告」。基本的には病気が進行しており、治る見込みが少ない患者に対して告げられるが、医師から余命宣告を受けたとき、患者側はどう捉えればいいのか。帯津三敬病院の帯津良一名誉院長が話す。
「医師から宣告された余命は、統計データでしかないので、気にする必要はないと思います。積極的治療を行なうか、それとも『緩和ケア』を行なうか。その後の生き方を見直すチャンスくらいに捉えるのが良いのではないでしょうか」
胆のうがんになり、2年前に医師から「余命1年」と宣告を受けた石田利明さん(69)は、生き方を見直した結果、余命を大幅に延ばした。
「『もう手術はできない』と言われたので、自分から余命を聞いたら『1年くらいです』と。頭の中が真っ白になりました。特に感情もなく、医師の言葉も頭の中を通り過ぎていった。ただ、『死ぬなら事故よりもがんがいいな』と漠然と考えていたので、命が残り僅かだと受け入れています。
余命宣告を受けたのが2年前の2月。翌年の1月に娘の成人式があったので、まずはそこまで生きようと思いました。私は美容師なので、娘の髪結いや着付けをして祝ってあげたかったんです。
その目標のために、マラソンなど運動をしていたら元気になって、いつの間にか2年経っていた。痛みや苦しみはありません。医者から見れば『生きているのが不思議』だそうです」
家族の支えで“余命が変わる”ケースもある。杉浦千恵子さん(68)は、18年前に腎臓がんに罹った息子についての余命宣告を受けた。