使ってはいけない言葉を政府が決めるという馬鹿げた話が中国で大真面目に進んでいる。呉智英氏は背景に日本への差別意識があると看破する。
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九月五日の朝日新聞に北京支局発のニュースが載った。支那政府が企業名に使われるべきではない「NGワードを決めた」というのである。中には「海洛因(ヘロイン)」など、確かにまずかろうと思うものもある(とはいえ、海洛因商事などという企業名があるとは考えにくいのだが)。しかし、「中国の蔑称『支那』」もその中の一つとあっては、笑い話ですますわけにはいかない。
「支那」は英語のChinaと同原の言葉で、支那を指す世界共通語である。支那最初の統一王朝「秦」を起原としている。これが蔑称のわけがない。「支那」が蔑視の文脈で使われることが多いというなら、Chinaだってそうだ。欧米で、あいつはChineseみたいな奴だと言う時、支那人みたいにかっこいいという意味など決してない。必ず悪い含意がある。私がスペインの田舎町に行った時、子供たちが私を指さしてChino Chino(チノ チノ)と笑った。西洋人は概して東洋人を蔑視してきた。
こうした西洋の東洋人蔑視に抗議するというのなら分からないではない。しかし、支那政府は、英米にもフランスにもスペインにも、Chinaと呼ぶのをやめよ、ChugokuもしくはCentral Land(中央の国)と呼べと言ったことは一度もない。必ず日本に対してのみ、こうした無茶苦茶な要求、というより差別的な要求をしてくるのである。
なぜ、これが差別的な要求なのか。