国内

閉園するスペースワールドへ一人で来た56才男性が探すもの

12月に閉園するスペースワールド(HPより)

 日本全国の公園・テーマパーク数は、1997年の192か所から、2016年の135か所と、20年で約3分の2にまで激減。

 全国の「我が心の遊園地」が苦況に立つなか、12月末、多くの地元民から“福岡のディズニーランド”と呼ばれて愛された『スペースワールド』が閉園することが決まった。福岡県民に“スぺワ”と呼ばれ、多くの小中学生は遠足で訪れるなじみ深い場所だっただけに、大きな衝撃が走った。

 閉園まで1か月を切った、寒さが身にしみる12月中旬、記者がスペワを訪ねると、平日かつ開園時間30分前にもかかわらず、すでに入り口には20人以上が並んでいた。閉園と聞いて息子を連れて駆けつけたという夫婦は、スペワがプロポーズの場所だと言う。

「初デートをしてふたりの距離が縮まったのがここで、だからスペワでプロポーズしたんです。妻は、まさかプロポーズされると思っていなくて泣いていました。人生の伴侶を得たこの場所がなくなるのは切ないですが、息子を連れて来ることができよかった」

 1人で来園したという56才の男性は、「怪しいでしょ、こういう年齢の人が1人でここにいるんだから」と言いながら、乗り物にも乗らず、スペワの光景を目に焼きつけるようにじっと見ている。離婚して離ればなれになった家族との思い出を探しに来たのだと言う。

「家族で遊びに来た15年前はまだ妻とも仲がよかったし、娘も息子も小学生。家族4人で何の不満も不安もない、私にとってはいちばんいい時期でした。息子が宇宙に興味を持って、スペワに展示されていた月の石を見たいって言うから来たんです。前日には何に乗って、どこでご飯を食べてって計画を立てて…。離婚してから家族の思い出にはなるべく触れないように生きてきたけれど、閉園すると聞いて、なくなってしまう前に当時のことを振り返ってみたいと思ったのです」

 家族のかけがえのない時間のつまった「我が心の遊園地」。次々と閉園する今、もはやもう行くことができない“思い出の中だけの場所”になってしまうのだろうか。

※女性セブン2018年1月1日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

百合子さまは残された3人の仲を最後まで気にかけられたという(2023年6月、東京・港区)
百合子さま逝去で“三笠宮家当主”をめぐる議論再燃か 喪主を務める彬子さまと母・信子さまと間には深い溝
女性セブン
氷川きよしが紅白に出場するのは24回目(産経新聞社)
「胸中の先生と常に一緒なのです」氷川きよしが初めて告白した“幼少期のいじめ体験”と“池田大作氏一周忌への思い”
女性セブン
公益通報されていた世耕弘成・前党参院幹事長(時事通信フォト)
【スクープ】世耕弘成氏、自らが理事長を務める近畿大学で公益通報されていた 教職員組合が「大学を自身の政治活動に利用、私物化している」と告発
週刊ポスト
多くのドラマや映画で活躍する俳優の菅田将暉
菅田将暉の七光りやコネではない!「けんと」「新樹」弟2人が快進撃を見せる必然
NEWSポストセブン
阪神西宮駅前の演説もすさまじい人だかりだった(11月4日)
「立花さんのYouTubeでテレビのウソがわかった」「メディアは一切信用しない」兵庫県知事選、斎藤元彦氏の応援団に“1か月密着取材” 見えてきた勝利の背景
週刊ポスト
田村瑠奈被告(右)と父の修被告
「ハイターで指紋は消せる?」田村瑠奈被告(30)の父が公判で語った「漂白剤の使い道」【ススキノ首切断事件裁判】
週刊ポスト
10月には10年ぶりとなるオリジナルアルバム『Precious Days』をリリースした竹内まりや
《結婚42周年》竹内まりや、夫・山下達郎とのあまりにも深い絆 「結婚は今世で12回目」夫婦の結びつきは“魂レベル”
女性セブン
騒動の発端となっているイギリス人女性(SNSより)
「父親と息子の両方と…」「タダで行為できます」で世界を騒がすイギリス人女性(25)の生い立ち 過激配信をサポートする元夫の存在
NEWSポストセブン
九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
「週刊ポスト」本日発売! 小沢一郎が吠えた「最後の政権交代を実現する」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 小沢一郎が吠えた「最後の政権交代を実現する」ほか
NEWSポストセブン