医師が処方した薬だから……。そう安心して、何気なく飲んでいた薬。一つ一つには効能があっても、“組み合わせ”次第でそれは“毒”にもなることも。
循環器科で不整脈治療薬「タンボコール」を、泌尿器科で頻尿の薬である「ベタニス」を処方されていたAさん(70代・男性)は、原因不明の体調不良を抱えていた。飲んでいる薬剤情報の一覧を薬局の薬剤師に持参したところ、2つの薬が“併用禁忌”であると指摘された。一緒に飲むことで不整脈を起こすなどの危険があったのだ。薬の飲み合わせの間違いが1年間、見過ごされていた──。
全国8800以上の薬局から情報を収集・分析している公益財団法人・日本医療機能評価機構が『ヒヤリ・ハット事例』としてネットで公開している一例だ。この事例集には、併用禁忌の薬が処方されていたケースが数多く報告されている。
薬剤師の堀美智子氏はこう警告する。
「複数の薬を同時に飲んでいると、体内を循環する過程で薬同士が作用を打ち消し合ったり、逆に増強されることがあります。その結果、体に思わぬ悪影響を及ぼすことがあります」
そうした薬効の増減は、「相互作用」と呼ばれる。製薬企業72社が加盟する日本製薬工業協会の説明。
「製薬会社は日頃から相互作用について医師や薬剤師に新しい情報をお伝えし、正しい処方がされるよう努めています。薬剤師は患者に飲み合わせなどの説明をする決まりになっていますが、市販薬の申告があれば併せて判断します。市販薬の場合も、薬剤師が常駐している店舗では相互作用がないか判断してくれます」
※週刊ポスト2018年1月1・5日号