飲食店やホテルの宿帳、ゴルフ場の利用申込書など、名前や住所と一緒にメールアドレスの記入を求められる機会がやたらと増えている。直木賞作家の山本一力氏(69)は腹立たしい思いだという。
「“今の時代、メールアドレスがあるのは当たり前”と決めつけられるのは不快だね。俺はスマートフォンも持ってないけど、“アドレスがないのはおかしい”と言われているようなもの。そんなバカな話はない!」
記入したらしたで、読みたくもない告知・宣伝メールを送りつけられる。
「最近、家電量販店でパソコンなどを買うと、“必須事項”としてメールアドレスの記入を求められる。でも俺は絶対に書きませんよ。面倒だし、書いたら余計なメールが来るだけだから」(山本氏)
そうしたなか、ネットで話題となったのが東京電力の口座振替申込書。メールアドレスの記入だけでなく、そこに「フリガナ」まで振らなければならないのだ。東京電力広報室によれば、「メールアドレスは必須事項ではなく任意です。“h”と“n”や“0”と“O”など、誤読がないようフリガナ欄を設けました」
新サービスへの移行に伴い、2018年1月中にメアド記入欄のない新しい申込書に切り替わる予定というが、実際に口座振替を申し込んだ男性(60歳)はこうため息をつく。
「“C”を“シー”と書けば良いのか“スィー”なのか、“D”は“デー”か“ディー”なのか。悩んで時間を無駄にしてしまいましたよ」
山本氏が続ける。
「そもそもメールアドレスは住所と違って役所に届ける事項でもない。メールを使うか使わないかは個人の内密事項でしょう。記入を求められても唯々諾々と従う必要はありませんよ。メールを使う人がいることに文句はないけど、あたかもそれが“世の常識”のように、俺にまで求めてくるのはやめてくれと。こんなことを言うと“偏屈”だの“時代遅れ”だの批判されるけど、俺は違うと思うね」
※週刊ポスト2018年1月1・5日号