その手紙が編集部に届いたのは師走も中旬を過ぎた頃だった。差出人は、森脇和子さん(仮名)。ヒップホップグループ『ET-KING』のメンバーで、2014年9月に自ら命を絶ったTENNさん(本名・森脇隆宏さん、享年35)の母親だ。この手紙の内容をTENNさんの妻だった上原多香子(34才)はどう受け止めるのか──。
《あの日からとてつもない深い悲しみ、喪失感を抱えてきました。スマホから何があったのかを知った時には余りにもわが子がかわいそうで苦しみました。遺書に私たちに向けて“あまり責めないでやって下さい”ともありました。本当に悩みました。
しかし、彼女も傷ついて悲しみや苦しみの中にある。私たちはひたすら息子を思う親心から、大きなものを飲みこみ、心にふたをして彼女の手を取り一緒に前を向いて歩いてきました。
しかし悲しみを癒やす時間や絆は違いすぎました。自殺に対する偏見、弱い人の身勝手な選択だという意見があることも、家族を失った者は違う形で二重三重に辛いものです。 私たちは息子の死によってたくさんのことを学ばせてもらっています。息子のためにも大切に毎日を生きていきます》
和子さんからの手紙にはそんな悲痛の叫びが綴られていた。
TENNさんと上原が結婚したのは2012年8月。そのわずか2年後、TENNさんは大阪府内の自宅マンション駐車場に停めた車の中で、この世に別れを告げた。